暑い環境で働く方にとって、涼しく作業できる空調服(※)は人気のアイテムです。しかし、空調服にはさまざまなタイプがあるため、迷ってしまうこともあるでしょう。自分の業種や作業環境に合ったものを選ばないと、快適に使いこなせない場合もあります。
本記事では、空調服のデバイス・ウェアの選び方を詳しく解説します。前半ではバッテリー・ファンなどのデバイスのスペック基準、後半ではウェアのサイズ・素材・袖の長さ・ファン位置を詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
(※)空調服®は株式会社空調服の登録商標。一般的な名称はファン付き作業着。本記事では便宜上、ファン付き作業着の意味で「空調服」と記載しています。
ここでは、空調服のデバイスであるバッテリーとファンの選び方について詳しく解説します。
空調服のデバイスは毎秒60L以上の風量を送風できるものがおすすめです。特に長時間の作業中でも涼しさを感じられるよう、8時間稼働時でも安定して60L以上の風量を維持できるかを確認すると良いでしょう。
ハイパワーモードで100Lを超える風量を送風できるデバイスもありますが、通常の作業では60L以上あれば十分涼しさを感じられます。
ただし、高温多湿になりやすい現場などで、こもった熱と湿気を一気に排出したい場合は、100L以上の風量を出せるファンが便利です。合わせて、ファンに対応するパワフルなバッテリーを選びましょう。最強スペックの商品を知りたい人は、次の記事をご覧ください。
バッテリーの充電にかかる時間も重要なポイントです。一般的な空調服のバッテリーは、フル充電にするまで約8時間かかります。前日の寝る前に充電を始めれば、朝にはフル充電で使用できるため、多くの場合は支障になることはありません。
一方、近年では3~4時間で充電が完了する高速充電に対応したバッテリーも登場しています。3~4時間であれば前日に充電を忘れてしまった場合でも、朝に充電すれば午後の作業には間に合うでしょう。
空調服のファンは汚れがたまると風量が弱まったり、故障の原因になったりするため、お手入れが簡単にできるものを選びましょう。丸ごと水洗いできるファンを選べば、メンテナンスの手間が大幅に軽減されます。
一方、水洗いできないファンの場合は、雑巾やウェットティッシュ、綿棒などでひとつひとつ汚れを拭き取る必要があります。
ファンの性能とお手入れのしやすさのバランスを見て選びましょう。
空調服を選ぶ際は、ウェア内で空気がしっかり循環するよう、通常の洋服の寸法より一回り大きいサイズを選ぶのがおすすめです。たとえばヌードサイズのバストが90~96cmの場合、通常の服であればバスト100~110cm程度が適当ですが、空調服なら115cm程度が適しています。
ただし、大きければ良いというわけではありません。襟元や袖口まで大きいと風が循環せず抜けてしまうため、涼しさを感じにくくなります。
なお、空調服は通常の作業着よりも大きめに作られているため、普段のサイズ(M・Lなど)を選んでも失敗することはほとんどありません。しかし、人によっては風が通りづらいと感じることもあります。サイズ表で胸囲や胴囲などの詳細を確認しておくのがおすすめです。
空調服は、ウェアの素材によって特徴や機能性が異なります。ポリエステル・綿・混紡素材・ナイロンのメリットとデメリットは次のとおりです。素材ごとに詳しく解説します。
ポリエステルは耐久性が高く、摩擦に強い素材です。シワになりにくく、軽量で動きやすいため、現場作業にも最適です。日焼けや虫に強いことから、空調服を使用しないオフシーズンでも長期保管がしやすくなっています。また、防汚や撥水、遮熱といった多機能性も大きなメリットです。
ただし、耐火性が低いため、火花が発生する現場での着用には注意が必要です。また、静電気が発生しやすいため、静電気が危険な作業環境では避けた方が良いでしょう。
綿は肌ざわりの良い天然素材です。通気性と吸汗性に優れており、暑い時期でも気持ちよく着用できます。また、難燃性に優れていることから、火花が発生する現場でも重宝します。制電性にも優れています。
デメリットとしては、洗濯をすると乾きにくく、シワになりやすい点が挙げられます。また、縮みやすい性質もあるため、お手入れに注意が必要です。ポリエステルやナイロンと比べると、若干重たさを感じるところもあります。
綿とポリエステルの混紡素材は、一般的にT/C素材と呼ばれています。片方のデメリットをもう片方のメリットで補うようにバランスよく配合された、まさに「良いところ取り」の素材です。
たとえば、速乾性がある一方で吸水性に劣るというポリエステルのデメリットは、綿の吸水性がカバーしています。このように補い合うことで、防しわ・高耐久・高通気などの機能を持たせられることが、混紡素材のメリットです。
ただし、耐燃性や制電性は綿100%素材に劣るなどのデメリットもあります。目的に敵う機能・性能があるかを確認しましょう。
ナイロン素材は防水性や耐寒冷性、耐薬品性に優れているのが大きなメリットです。また、ポリエステルと同様に耐久性が高く、摩擦に強い特性も持っています。
さらに、綿ほどではありませんが、火に強く燃えにくいのも特徴です。テントなどのキャンプグッズにもよく使用されています。
デメリットは熱に弱いこと、静電気が発生しやすいことです。また、耐久性は高いものの変色することがあります。そのため、乾燥機やアイロンの使用、オフシーズンの長期保存には注意が必要です。
空調服ウェアは腰の部分にファンが付いているのが一般的ですが、上部やサイドにファンが配置されているモデルもあります。ここでは、空調服のファンの位置とそれぞれのメリットについて解説します。
空調服のファンは背面の腰上部分に配置されているのが一般的です。腰部分から上半身全体に風を循環させることで、体全体を効果的に涼しくします。なかでも汗をかきやすい背中や汗が溜まりやすい腰部分を効率的に冷やせます。
さらに、ファンが腰にあるため、腕や肩の動きを妨げず動きやすいことも人気の理由です。バッテリーを収納するポケットが近く、ケーブルが短くて済むため、装着がしやすく、煩わしさを感じにくい点もメリットです。
背面ファンの空調服では、重機などに乗り座って作業する際、椅子の背もたれで腰のファンが塞がれてしまうことがあります。そんな状況で役立つのが、背面上部にファンが付いたハイバックタイプです。
ハイバックタイプは椅子の背もたれより上にファンが配置されているため、空気の循環が妨げられません。また、ファンの位置が上部にあることで、脇や首元を効果的に冷やせます。背中や腰回りよりも首や脇の汗が気になる方にもおすすめのモデルです。
ハイバックファンでも、トラックやフォークリフトなどの高い背もたれの車両を運転する場合、ファンが背もたれで隠れてしまうことがあります。そんな時におすすめなのが、脇腹部分にファンが付いたサイドファンタイプです。脇腹部分のファンなら、背もたれに邪魔されず、しっかりと空気を取り込めます。
サイドファンタイプは脇を重点的に冷やしてくれるため、脇汗が気になる方にも適しています。また、背面ファンやハイバックファンと異なり、左右均等に重みが分散されるため、バランスが取りやすいのもメリットです。
空調服のウェアには長袖・半袖・ベストの3種類があります。それぞれの特徴を解説します。
長袖タイプは一見暑そうに見えますが、手首までしっかりと風が循環し、上半身全体を効率よく冷やすため、最も涼しさを感じられます。
また、長袖は上半身全体をカバーするため、日焼けや作業中の汚れ、ケガから体を守るのにも効果的です。屋外作業や危険を伴う現場に特におすすめのタイプです。
袖がないベストタイプは腕や肩の動かしやすさで支持されています。袖がない分軽量で疲れにくく、価格も比較的お手頃なものが多いことも利点です。カジュアルな雰囲気なので、業務だけでなく、アウトドアや夏のレジャーでも活躍します。
さまざまなインナーと組み合わせがきくのもベストタイプのメリットです。腕の日焼けが気になる場合はUVカット機能付きの長袖インナーを、より涼しく過ごしたい場合は清涼冷感機能のインナーを選ぶなど、目的に応じて選んでみましょう。
半袖タイプもベストタイプと同様に、肩や腕を動かしやすいのが特徴です。。汗をかきやすい脇部分にもしっかりと風を送り込めるのがメリットです。
インナーとの組み合わせがしやすいだけでなく、アームカバーとの相性も良いものとなっています。UVカット機能付きなど、機能性に優れたアームカバーを必要な時に装着し、不要な時はすぐに外せるので、天気や気温に合わせて柔軟に調整できるのが便利です。
空調服のウェアを選ぶ場合は少し大きめのサイズを選びましょう。バッテリーは約8時間ほど稼働するもので、毎秒60L以上で送風できるものがおすすめです。
他にもウェアの素材やファンの取付位置、袖の長さなどは、現場の環境や作業内容に合ったものを選ぶことが重要です。ぜひ空調服選びの参考にしてみてください。