空調服(※)にはファンやバッテリーを搭載して使うほか、ウェア自体にもさまざまな機能性が付加されているため、洗濯のときに気になるポイントが多くあるでしょう。正しい洗濯方法を知っておくことで、故障や不具合のリスクを避けられます。
この記事では、空調服の正しい洗濯方法を5つのステップに分けて詳しく解説します。洗濯表示の見方や水溶性・油溶性・不溶性別の頑固な汚れの落とし方、洗濯機・乾燥機の故障につながる注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。
(※)空調服®は株式会社空調服の登録商標。一般的な名称はファン付き作業着。本記事では便宜上、ファン付き作業着の意味で「空調服」と記載しています。
空調服・ファン付き作業着の洗濯手順は次のとおりです。ステップごとに詳しく解説します。
各種デバイスを取り外す
洗濯表示を確認する
頑固な汚れは落としておく
手洗いまたは洗濯機で洗濯する
洗濯表示に従って乾かす
まずはファン・バッテリー・ケーブルを取り外しましょう。デバイスごと洗濯してしまうのを防ぐために、必ず最初に行うことを意識するのがポイントです。
電源がオフになっていること、ファンが回っていないことを確認し、各種プラグを外します。ファンの詳しい取り外し方・掃除の仕方は次の記事をご覧ください。
洗濯を始める前に、使用して良い洗剤の種類や洗濯時の水温・力加減を確認しておきましょう。洗濯表示を無視してしまうと、ウェアがダメージを負って寿命が短くなってしまう恐れがあるからです。
洗濯機・漂白剤・乾燥機の使用可不可、水温、干し方などは記号で表示されています。そのほか、洗濯ネットの使用やアイロン時の当て布などの注意書きもあるため、必ず確認しましょう。
洗濯桶の中に数字が記載されている表示は、洗濯機可であることを示しています。数字は上限の水温です。桶の下に線がある場合、1本なら弱、2本なら非常に弱い力で洗うことを示しています。洗濯機のおしゃれ着コースなどが「弱」設定です。機種によるため洗濯機の仕様書を確認しておくことをおすすめします。
手洗い表示の場合は、桶の下の線が力加減ではなく水温を示すため注意しましょう。そのほか、漂白剤の使用やドライクリーニング処理などの洗濯表示があります。
油や泥などの頑固な汚れはあらかじめ落としておきましょう。洗濯機で洗うだけでは落ちない可能性が高いからです。たとえば、泥汚れはブラシなどで乾いた泥を掻き出してから洗うと、汚れが広がりづらくなります。
水溶性・油溶性・不溶性の汚れ別の詳しい洗い方は、本記事の「頑固な汚れの種類別の落とし方」で解説します。
洗濯表示に従って、手洗いまたは洗濯機で洗濯しましょう。他の洗濯物と一緒に洗っても構いませんが、次のような状況のときは単体で洗うことをおすすめします。
購入してから初めて洗う場合
汚れが多い場合
金属などの硬いパーツ・突起物が多い場合
購入後に初めて洗うときは、染料が他の洗濯物に移ってしまう恐れがあるため単体で洗いましょう。また、汚れが多いときも他の洗濯物に汚れが移ってしまう可能性があります。
金属などの硬いパーツや突起物が多い場合は、他の洗濯物にひっかかってキズをつけてしまう恐れがあります。洗濯ネットに入れれば問題ないケースもありますが、できる限り避けましょう。
製品によってはタンブラー乾燥NGのものや陰干し指定のものがあるため、注意が必要です。洗濯表示に合わない干し方をすると、変形・変色・機能低下の恐れがあります。洗濯表示の例は次のとおりです。
四角の中の線が縦であれば、ハンガーにかけて干すつり干し乾燥向きであることを示しています。横向きなら平面に置いて乾かす平干し向きです。四角の左上に斜線が入っているものは、日陰で干すことを示しています。
四角の中に点が入っているものは、タンブル乾燥(一般的な洗濯機の乾燥機能)を示すものです。黒い点の数が乾燥の排気温度を示しており、2つなら80℃上限、1つなら60℃上限を示しています。バツ印のものはタンブル乾燥不可です。
水溶性・油溶性・不溶性別の頑固な汚れの落とし方を解説します。頑固な汚れを落としてから、洗濯機や手洗いによる通常の洗濯をおこないましょう。なお、汚れの種類によりますが、使い古しの歯ブラシをとっておくことをおすすめします。
サラサラした汗やジュースなどは水溶性の汚れです。水に溶けるため通常の洗濯でも十分に落ちる可能性はありますが、汚れが付着したときに素早く落としておくことをおすすめします。染み付きのリスクを低減できるからです。
洗濯機などを使って本格的に洗うまで日を空ける場合は、目立った水溶性汚れだけでも水で落としておきましょう。
皮脂や機械油などの汚れは、油に溶ける油溶性かつ酸性の汚れです。アルカリ性で中和することで落としやすくなります。ただし、アルカリ性漂白剤は染料の色も落としてしまうため、使用NGの場合があります。
そのときにおすすめなのは、食器用洗剤またはメイク落とし用のクレンジングオイルです。食器用洗剤を使う場合は、ぬるま湯にウェアを浸してから汚れ部分に食器用洗剤を垂らし、歯ブラシでこすりましょう。生地を傷めない程度の軽い力でこするのがポイントです。そのあと水ですすいで、通常の洗濯をおこないます。
クレンジングオイルの場合は、油汚れに直接クレンジングオイルを垂らし、歯ブラシで叩くようにしてなじませます。その後、ぬるま湯で揉み洗いしましょう。いずれの場合も、油が溶けやすいぬるま湯を使用するのがポイントです。
土・泥汚れは最初に水をつけるのはNGです。一見すると水に溶けるように見えますが、不溶性なので粒子が細かくなっているだけで、溶けてはいません。水に浸してしまうと細かな粒子が繊維の奥まで入り込み、汚れを落としにくくなってしまいます。
まずは汚れをしっかり乾燥させることがポイントです。その後、歯ブラシなどで掻き出すようにして、可能な限り落としましょう。
それでも落ちない場合におすすめなのは、洗濯用の固形石鹸です。ぬるま湯に浸してから汚れ部分に固形石鹸を塗り込み、揉み洗いしましょう。なお、鉄分を含む泥汚れの場合は還元型漂白剤なら綺麗に落とせる可能性があります。
空調服のウェアを洗濯するときの注意点を5つ解説します。事故やウェアの機能低下につながるリスクもあるため、必ず確認しておきましょう。
油汚れが染みついているウェアは、乾燥機にかけると発火するリスクがあります。染みついた油が加熱されることで酸化反応を起こし、自然発火することが原因です。
また、すぐに発火するとも限らない点に注意が必要です。
製品評価技術基盤機構(NITE)の実験結果では、乾燥機によって乾かしたものを放置後、2時間以上経過してから発火したケースがありました。外出中に発火、火事になることも考えられるため、油汚れのあるウェアを乾燥機にかけるのはやめましょう。
参考:製品評価技術基盤機構(NITE)「洗濯物から発煙・発火」
防水ウェアを洗濯機にかけると、洗濯機が故障するリスクがあります。防水ウェアは水を通さないため、通常の衣服の脱水とは大きく異なるためです。次のような状況を引き起こします。
ウェアが洗濯機の排水穴を塞いで排水がスムーズにできない
ウェアが袋のように水を抱え込んだまま回転する
溜まった水が一気に抜ける
このような状況になると洗濯機のバランスが崩れるため、異常振動・転倒・破損につながります。洗濯機が回転しながら転倒することで、周囲の洗面台や壁、床まで破損させるリスクもあるため要注意です。防水ウェアは洗濯機で洗わないようにしましょう。
柔軟剤の主成分は界面活性剤で、繊維に薄い膜のようなものを作り出し、摩擦を防ぐ効果があります。しかし、この柔軟剤の膜が撥水・通気機能を妨げることがあるため注意が必要です。
撥水機能のウェアは生地表面に撥水用コーティングが施されています。コーティングの上に柔軟剤の膜を張ってしまうと、撥水効果が失われかねません。通気機能では空気を通すための細かな隙間が、柔軟剤の膜によって塞がる可能性があります。
撥水・通気機能付きのウェアを洗うときは、柔軟剤を入れないようにしましょう。
遮熱効果を高めるチタンコートは生地表面に施されているため、摩擦によって剥がれる可能性があります。洗濯機で洗うときは、ウェアのフロントファスナーをしっかり閉め、洗濯ネットに入れるようにしましょう。摩擦ダメージを軽減できます。
また、チタンコートは熱や強力な洗剤にも弱いため、タンブラー乾燥・アイロン・漂白剤は基本的にNGです。コーティングが剝がれやすくなる浸け置き洗いも避けましょう。
空調服は基本的にはアイロン不要です。しわがひどいときなど、どうしてもアイロンをかける必要がある場合は、設定温度を「低」にした上で当て布をしましょう。高温のアイロンが服に直接触れないように注意する必要があります。
とくに、ポリエステルやナイロンなどの化繊はアイロンの温度によっては溶けたり、変形したりする可能性があります。目立った変化が見られなくても、通気・撥水・遮熱・UVカットなどの機能が損なわれている可能性があるため、アイロンは避けるのが無難です。
持ち運ぶ機会が多い人など、しわが気になるのであれば、防しわ加工生地の空調服がおすすめです。
空調服は使用するたびに洗うことをおすすめします。とくに、1日8時間程度着用する場合には、汗や埃などで汚れているため、洗わずに再度着用するのは避けましょう。汚れや臭いが染みついたまま数日放置すると、洗っても落ちにくくなります。
真夏などの汗を多くかくときや泥・土埃が多い屋外作業なら、洗い替え用のウェアを2~3枚購入しておくのがおすすめです。1日程度洗濯できない日があっても、毎日着用しやすくなります。
短時間の着用・屋外作業なら2日続けて着ても問題ない場合もありますが、それでも洗い替えは1~2枚持っておくのがおすすめです。
空調服は肌の上あるいは薄手のインナーの上から着るため、汗で汚れやすいウェアです。また、埃・油・泥・洗浄作業時の水ハネなどの外的要因でも汚れます。汚れを放置すると染みつきや臭いの原因になるため、使用するたびに洗うのがおすすめです。
洗うときは洗濯表示を必ず確認し、水温・洗剤・干し方などに気を付けましょう。正しい洗濯方法を実践することは、ウェアの寿命を長く保つことにつながります。
ただし、タンブラー乾燥可の商品であっても油汚れがあるときはNGなど、注意点もあります。ウェアの特性や汚れの質を把握し、丁寧にケアしましょう。