医療用スクラブは医療・福祉の現場で働く方にとって、毎日身に着ける身近なアイテムです。しかし、制菌・防汚といった機能性に優れたものや、カラーリングなどデザインが凝ったものなど様々で、どれを選べばよいか迷う方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事ではスクラブの選び方を、サイズ・色・職種別・男女別に分けて詳しく解説します。それぞれ項目別の選び方を知ることで、自分に合ったスクラブが見つかるはずです。スクラブを新調したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
まずは、スクラブのサイズの選び方を解説します。ハードな医療・福祉の現場において、サイズ感の合わないスクラブを着用することはパフォーマンスの低下につながります。以下では、大きく2つのポイントでサイズの選び方を解説していますので、ぜひご覧ください。
スクラブのサイズ感は、着用時の動きやすさが最も重要なポイントになります。以下は、服を着ていない状態のヌードサイズを基準とした目安です。
サイズが小さすぎると窮屈で動きづらくなってしまうので、肩幅と胸囲にゆとりを持ったサイズ選びが重要です。腕を上げ下げしたり、屈んだりした際に突っ張ってしまわないように作業がしやすいゆとりを意識しましょう。
逆に、上記の目安より大きすぎるものを選んでしまうと、服のもたつきが気になり、作業の邪魔になる可能性があります。また、首周りが開きやすく、屈んだ際に胸元が見えてしまうこともあります。
スクラブはメンズ・レディース・ユニセックス用で、サイズ感が大きく異なります。以下は一例として、「Mサイズ」のそれぞれのサイズ感の違いを表にしたものです。
Mサイズの比較(単位:cm)
ユニセックス(男女兼用)タイプのスクラブは、メンズ用に近いサイズ感となっています。特に肩幅はメンズ用に近い商品が多く、普段レディース用のMサイズを着用している人が、ユニセックス用のMサイズを着ると大きく感じる可能性があります。
一方、メンズ用スクラブを着ている人がユニセックスの商品を着ると、胸囲がきつく感じられる場合があります。メンズ・レディース用からユニセックスに変更する場合は、商品詳細ページのサイズ表をもとに、自分の体形にフィットする大きさのものを選びましょう。
続いて、スクラブのカラーの選び方について解説します。豊富なカラーバリエーションからスクラブを選ぶ際、どの色を選べばよいか迷ってしまうことも多いのではないでしょうか。ここでは色選びのポイントとして、3つの観点からご紹介します。
カラー選びに迷ったら、ブルー・ネイビー・グリーンなどの定番色をおすすめします。ブルーやネイビーは落ち着いた印象を与えるため、医療現場では万人受けしやすいカラーです。また、濃いめの色を選べば汚れが目立ちにくくなるというメリットもあります。
グリーンは手術着として一般的なカラーです。グリーンを使う理由は、手術で赤い血液を長時間見た際に、視線を外しても青緑色が見えてしまう「補色残像」を軽減するためです。ただし手術着のイメージが強いので、外来や看護ではグリーンはあまり使用されていません。
職場や患者、顧客などに与えるイメージ・雰囲気など、色の違いによって発揮される効果は異なります。下記の表で主なスクラブのカラーとその効果をまとめていますので、色選びの参考にしてみてください。
前項でご紹介した定番色以外にも、様々な色のスクラブが使われています。しかし、ホワイトやピンクなどは職種を問わず使いやすい反面、色が薄く汚れが目立ちやすいというデメリットもあります。
また、ブラックやワインレッドなどの色は信頼感や高級感を演出できますが、近寄りがたい印象を持たれてしまう可能性もあります。病院やクリニックの雰囲気に合わせて、求める効果を発揮できるカラーを選びましょう。
所属するチームや自身の階級など、スタッフの属性によってスクラブの色を変えるという方法もあります。所属・役割を視覚化できるので、職場内での作業効率が上がるでしょう。
診療科別での色分けする方法も医療現場では一般的です。内科はグリーン、小児科はピンクなど、診療科ごとに着用するスクラブのカラーを決めることで、チームとしての一体感が生まれます。患者側が自分が受診する科を認識しやすくなるのもメリットです。
スタッフの勤務時間帯で色を分ける方法もあります。日勤と夜勤とで色が異なれば、職場全体でスタッフの勤務状況の管理がしやすくなるでしょう。そのスタッフがどういった勤務体制なのかがわかりやすいので、残業時間の抑制に一定の効果があると言われています。
階級・勤続年数によって色分けするのも、スタッフの管理において有効です。経験の差のバランスをチーム内で取りやすくなったり、ベテランスタッフが経験の浅い人をサポートしやすくなったりといった効果があります。
以下に、ベースカラーのバリエーションの豊富なスクラブと、ワンポイントカラーに違いがあるスクラブをそれぞれ1点ずつ紹介します。
医療・福祉の現場で幅広く使われているスクラブですが、医師や看護師、介護士など、職種によって必要な機能が異なります。ここからは、職種ごとにそれぞれ必要なスクラブの機能、ポイントを紹介していきます。
医師が着用するスクラブに必要な機能としては、以下のものが挙げられます。
医師向けのスクラブは、清潔感と衛生面を重視した機能性が重要です。特に外科手術を行う医師には、感染を抑制するための制菌性や、手術中の汗対策としての吸汗速乾性が求められます。医師と患者を守る機能性の高いスクラブを選びましょう。
菌やウイルスに対する機能を示すものとして、SEKマークがあります。これは、一般社団法人繊維評価技術協議会が定める認証制度で、制菌加工の橙・赤マーク、抗菌防臭の青マークなどがあります。制菌性や抗ウイルス性を求めるなら、SEK認証の商品を選びましょう。
歯科医・歯科衛生士・歯科助手向けのスクラブには、主に以下の機能が必要となります。
歯科治療中は汚れや薬品が飛散することが多いので、歯科医・歯科衛生士・歯科助手には防汚性の高いスクラブがおすすめです。また、汚れの目立たない色や、洗濯に強い丈夫な生地を使用したものが使いやすいでしょう。
頻繁にクリーニングに出すことが難しい場合、家庭洗濯可の商品であれば洗いやすいので清潔感を保ちやすくなります。さらに、防シワ加工が施されたスクラブなら繰り返し洗濯してもシワになりにくく、きれいな状態を保てます。
看護師向けのスクラブとしては、以下の機能を持つものが求められます。
広い院内を移動しながら重労働を求められる看護師には、ストレッチ性や吸汗速乾性を持つスクラブがおすすめです。腕を上げ下げしたり、屈んだりした際に袖や背中が突っ張らないような伸縮性を持っていると、ストレスなく動くことができ、体への負荷も軽減できます。
ペンや印鑑、PHSなどを入れやすい収納力のあるポケットも必要です。ペン用の内ポケットがあれば、小物が散らかったり、ペン先で周りを汚したりするのを防げます。また、スマホなどの重いものを入れても首や肩に負担がかからない、重量拡散ポケットも便利です。
臨床工学技士・臨床検査技師・放射線技師が使うスクラブに必要な機能としては、以下のものが上げられます。
生命維持管理装置の操作や放射線治療など精密機械を扱う職種には、制電性を持つスクラブが必要です。静電気やほこりの発生を抑えるので、機器の不具合や火災の発生リスクを軽減します。機器の操作やメンテナンスがしやすいようにストレッチ性も求められるでしょう。
病理検査を行う臨床検査技師や、手術をする臨床工学技士の場合は、制菌・防汚性も重要です。自身や患者を感染などから守り、衛生的に検査・手術が行えるように、SEKマークを持つスクラブなどを選びましょう。
美容外科・サロン向けのスクラブに必要な機能としては、主に以下のものが必要です。
患者・顧客から清潔感や華やかさを求められる美容外科・サロン向けには、デザイン性の高いスクラブがおすすめです。カラーリングやシルエットなどがスタイリッシュな商品もありますので、クリニックの雰囲気に合わせて選んでみましょう。
高級感のあるクリニックならファッションブランドとのコラボモデルや、光沢をもつ素材を使ったエレガントなものなどがおすすめです。また、手術を行う美容外科の場合は、ほかの医師と同様に制菌・防汚性能などの機能性も必要になります。
介護士向けのスクラブとしては、主に以下の機能が必要となります。
介護士は利用者との距離が近く、汚れる場面も多い仕事なので、防臭・防汚性を持つスクラブがおすすめです。頻繁な洗濯にも耐えうる耐久性があると使いやすいでしょう。ハードワークを求められるので、ストレッチ性や吸汗速乾性も重要な機能といえます。
そのほか、介護士が使うスクラブには撥水性があると便利です。水滴や飛沫を弾くので、入浴介助など濡れやすい場面で役立ちます。また、庭やベランダなど屋外での業務が多い方は、UVカット機能を備えたものを選びましょう。
獣医師が使うスクラブには、以下の機能が必要となります。
獣医師には、帯電防止のために制電性を持つスクラブがおすすめです。静電気の発生を抑えるので、動物の毛がつきにくくなります。生地に制電糸が使われているものなどを選びましょう。また、撥水性があれば飛沫などを弾くので衛生的です。
動物に直接触れて診断・治療を行うので、抗菌・防臭性などの機能性も備わっているかチェックしましょう。なかには銀イオン配合によりバクテリアの発生を抑え、ニオイを軽減するスクラブもあります。
最後に、男女別のスクラブの選び方について解説します。体格の違いなどによって選ぶべきスクラブは異なるため、ポイントをおさえて、自分にぴったりの商品を選びましょう。
男性用スクラブを選ぶ際は、以下のポイントをおさえておきましょう。
フィット感やシルエットを崩したくない男性には、メンズ用のスクラブをおすすめします。ユニセックスでも構いませんが、メンズ用と比べるとややタイトな傾向があるからです。メンズ用ならゆとりを確保しやすく、腕・肩や腰回りをスムーズに動かせます。
また、男性は女性に比べ低い温度でも汗をかきやすいと言われているので、吸汗速乾性に優れたスクラブがおすすめです。加えて、家庭洗濯可・洗濯耐久性が高いものを選ぶと、夏場のケアが楽になります。
女性用スクラブを選ぶ際は、以下のポイントをおさえておきましょう。
髪型やメイク崩れを防ぎたいなら、前開きや履いて着るタイプのスクラブがおすすめです。頭から被る必要がないので、着用時に服が頭や顔に触れません。また、襟元が浅めのものを選ぶと、屈んだ際に胸元が開きにくいので安心です。
白色のスクラブを選ぶなら、透け防止加工が施されているものにしましょう。色が濃いものであれば心配はありませんが、病院などでは白やピンクなど淡い色を着ることが多いでしょう。その場合は透け防止性能のほか、防水・撥水性に優れたものもおすすめです。
今回はスクラブの選び方を、サイズ・色・職種別・男女別に分けてご紹介しました。種類が豊富なスクラブですので、選ぶ基準を明確にすることが重要です。それぞれ項目ごとに求めるものを選んでいくことで、自分にぴったりのスクラブが見つけやすくなるでしょう。
新しいスクラブを探している人はもちろん、今までなんとなく同じスクラブを使い続けていた人も、より自分に合うスクラブを選んでみてはいかがでしょうか。ぜひ、本記事を参考にしてみてください。