産業用ヘルメット(保護帽)は、建築・運送・林業・電気工事など幅広い業界で着用が義務付けられている保護具です。厚生労働省が定める規格によって、飛来・落下物用、墜落時保護用、電気用の3種類に分かれます。
しかし、規格による分類だけでなく色や素材、フェイスシールドの有無といった仕様でも選択肢があるため、迷ってしまうこともあるでしょう。
本記事では、産業用ヘルメットの定義から各規格の詳細、シーンに応じた選び方まで詳しく解説します。ヘルメット選びに迷っている人は、ぜひ参考にしてください。
産業用ヘルメットは業務において、頭部を衝撃や感電から守るための保護具です。厚生労働省が定める労働安全衛生規則では「保護帽」と記載しています。
厚生労働大臣が定める型式検定に合格したものだけが、保護帽として認められます。保護帽には次の情報を記載したラベルを貼ることがルールです。
検定取得年月(更新年月)
検定番号
製造業者名
製造年月
区分
区分は、飛来・落下物用、墜落時保護用、電気用7,000V以下の3種類です。区分ごとの規格は次の項目で詳しく解説します。
引用:厚生労働省「その保護帽(産業用ヘルメット)正しく使用してますか?」
産業用ヘルメットには飛来・落下物用、墜落時保護用、電気用7,000V以下の3つの区分があります。それぞれの規格を解説します。
引用:厚生労働省「その保護帽(産業用ヘルメット)正しく使用してますか?」
飛来・落下物用ヘルメットでは、衝撃吸収試験と耐貫通性試験がおこなわれます。飛来物や落下物を模したストライカーをヘルメットに落下させ、性能を測る試験です。
5kgのストライカーを1mの高さから落下させたとき、ヘルメットがない状態では人頭に39kN~49kN(キロニュートン)の衝撃が加えられます。致死域は19kNです。衝撃吸収試験では、最大衝撃荷重が4.9kN以下(1/10の衝撃)になることを確認します。
また、幅広い現場で使えるように、試験前の処理をおこないます。高温・低温・水を扱う環境下でも、ヘルメットの性能に差が生じないことを確認するためです。
日本産業標準調査会「日本産業規格 JIS T 8131:2015 産業用ヘルメット」
耐貫通性試験では、飛来物や落下物の先端が頭部に刺さらないことを確認します。帽体の硬さとハンモックとの隙間などによって、ストライカーの先端が頭部に接触しなければ合格です。
引用:厚生労働省「その保護帽(産業用ヘルメット)正しく使用してますか?」
墜落時保護用ヘルメットは、帽体とハンモックの間に衝撃吸収ライナーが入っているのが特徴です。帽体・ハンモック・衝撃吸収ライナーで、転倒や墜落時の衝撃を抑えます。
墜落時保護用ヘルメットでは、前頭部と後頭部で衝撃吸収試験と耐貫通性試験がおこなわれます。
飛来・落下物用の試験と同様に、高温・低温・浸せきの前処理をおこなって試験します。ストライカーの質量や落下の高さも同様ですが、ヘルメットの前頭部と後頭部で試験するのが特徴です。
合格基準は最大衝撃荷重が4.9kN以下であることに加え、衝撃の大きさに応じた継続時間をクリアしていることも求められます。
日本産業標準調査会「日本産業規格 JIS T 8131:2015 産業用ヘルメット」
飛来・落下物用試験とは違い、ヘルメットの帽体(外側の硬い部分)のみで試験をおこないます。
試験用器具の頂部リングという部分の上端から、ストライカーの落下によって帽体内面に生じたくぼみの最下降点、あるいは貫通したストライカーの先端までの垂直距離が15mm以下であれば合格です。
耐貫通性試験も、帽体の前頭部・後頭部の両方でおこないます。
日本産業標準調査会「日本産業規格 JIS T 8131:2015 産業用ヘルメット」
電気用ヘルメットでは耐電圧性試験をおこないます。ヘルメットの帽体のみを、水道水で満たした水槽に入れて電圧をかける方法です。電圧を徐々に上昇させて計測します。1分間耐えられる性能電圧によって、次の3種類に分類されます。
産業用ヘルメットの選び方を、次ののポイントに分けて解説します。
作業内容
素材
サイズ
色
仕様(ひさしの有無など)
作業内容に応じた産業用ヘルメットの種類を表にまとめました。
法律や規則、各種通達によって適したヘルメットは決められています。違反した場合は罰則もあるため注意が必要です。詳しくは次の記事をご覧ください。
引用:厚生労働省「その保護帽(産業用ヘルメット)正しく使用してますか?」
飛来・落下物用ヘルメットと墜落時保護用ヘルメットの衝撃吸収力の違いを、50cmの高さから鉄板の上に落下した場合で比較してみましょう。
高所からの転倒・落下に備えるためには、墜落時保護用ヘルメットが有用であることがわかります。
ヘルメットの素材は主に4種類です。性質が異なるため、適した作業にも違いがあります。
上記の性質から適した作業内容・環境を以下にまとめました。
屋外作業:PC・PE・FRP
高温・低温環境:FRP
有機溶剤を使用する作業:PE・FRP
電気工事:PC・ABS・PE
作業内容に応じた規格の確認とともに、素材にも着目してみましょう。
頭囲を測ってからヘルメットを選びましょう。巻き尺(メジャー)を用意し、額(おでこ)の最も高い部分から、後頭部の最も高い部分を囲んで測ります。
なお、ヘルメットのサイズは次のように記載されています。
数字に幅があるのは、後頭部にあるヘッドバンドで調整できるためです。ヘルメットのメーカーごとに違いがあり、タニザワでは53~63cm、ミドリ安全では55~62cmを基準としています。
ヘルメットの色は白が定番です。白は熱を吸収しにくく、屋外作業に適しています。また、汚れや傷が目立ちやすいため、交換時期を把握しやすいのも白のメリットです。
一方、会社のイメージカラーに合わせる方法や、色が持つ効果・特徴で選ぶ方法もあります。色別の特徴と活用例は次のとおりです。
複数の企業が合同で作業をする大規模な建築現場などでは、会社別あるいは担当作業別でヘルメットの色を分ける場合もあります。
ヘルメットの基本機能以外に、便利な機能を備えた仕様のものもあります。代表的な仕様4つを紹介します。
粉塵が生じる現場ではフェイスシールド、雨天の作業には雨垂れ帽子機能など、シーンに応じて仕様を選びましょう。
透明ひさしの色によって、得意とする環境が異なります。
作業する時間帯や場所に合わせて選びましょう。
産業用ヘルメットには耐用年数があります。しかし、耐用年数以内でも汚損の程度によっては交換が必要です。詳しく解説します。
産業ヘルメットの耐用年数は素材によって異なります。熱可塑性樹脂製の産業ヘルメットの耐用年数は使用開始から3年です。熱可塑性樹脂にはPC・PE・ABSなどがあります。熱硬化性樹脂製(FRPなど)の場合は使用開始から5年が耐用年数です。
ただし、あご紐やハンモックなどの耐用年数は1年なので、パーツ交換が必要です。
耐用年数以内でも、ヘルメットのパーツ別のチェックポイントに該当すれば交換タイミングです。
引用:厚生労働省「その保護帽(産業用ヘルメット)正しく使用してますか?」
出典:株式会社谷沢製作所「保護帽交換の目安 20のチェックポイント」
引用:厚生労働省「その保護帽(産業用ヘルメット)正しく使用してますか?」
出典:株式会社谷沢製作所「保護帽交換の目安 20のチェックポイント」
引用:厚生労働省「その保護帽(産業用ヘルメット)正しく使用してますか?」
出典:株式会社谷沢製作所「保護帽交換の目安 20のチェックポイント」
産業用ヘルメットには、飛来・落下物用、墜落時保護用、電気用の3種類があります。厚生労働大臣が定める型式検定に合格したものだけが該当し、着用すべき種類も用途ごとに決められています。まずは、規則に応じた種類を把握しましょう。
そのうえで、作業内容や環境に応じた素材・色・仕様を選びます。ひさしの色だけでも快適性が変わるため、着用シーンをイメージしながら選ぶのがコツです。サイズはヘッドバンドで調整できるので、最小サイズと最大サイズが頭囲の範囲内であれば問題ありません。
本記事を参考に、作業内容にマッチするヘルメットを選びましょう。