2023年(令和5年)は、法律や規則でヘルメットの着用義務の範囲が拡大した年です。自転車乗車時のヘルメット着用が努力義務となり、産業においても、ヘルメットの着用が義務化された作業の項目が増えました。
これまではヘルメットを着用してこなかったシーンも義務の対象となる場合があるため、あらためて各種法律や規則を確認しておきましょう。
本記事の前半では、法律・規則の改正によってヘルメット着用義務が追加された自転車と運送業の詳細を解説します。後半では産業におけるヘルメット(保護帽)の着用義務一覧を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
ヘルメットの着用が義務化されている主なシーンは次のとおりです。
自転車乗車時(努力義務)
トラック乗車時
高所作業
掘削・砕石作業
林業
建設業
工事
ヘルメットの着用が義務付けられているのは、基本的に転倒・落下・飛来物等による頭部への衝撃が想定されるシーンです。ただし、電気工事においては頭部の感電事故を防ぐために絶縁ヘルメットを使用します。
道路交通法が改正され、2023年(令和5年)4月1日から自転車乗車時のヘルメット着用が努力義務になりました。改正された法律の概要と罰則の有無、ヘルメット購入の補助金について解説します。
道路交通法第63条11では改正前から、児童・幼児のヘルメット着用の努力義務を示していましたが、改正によって努力義務の範囲が大人にも拡大しました。
引用:福岡県警察「全ての自転車利用者のヘルメット着用努力義務化について」
2023年7月1日の道路交通法改正により、原動付自転車の中で次の条件に合致するものは、特定小型原動機自転車という区分になりました。
最高速度が20km/h以下
定格出力が0.6KW以下
長さが1.9m以下
幅が0.6m以下
これ以外の原動付自転車は一般原動付自転車と呼びます。特定小型原動付自転車の代表例は電動キックボードです。
改正前まで電動キックボードも他の原動付自転車、いわゆる「原付」と同様にヘルメットの着用と車道の走行が必須でした。改正後はヘルメット着用が努力義務となり、歩道の走行も可能になりました。ただし、歩道走行の場合は時速制限が6km/hです。
道路交通法 第63条の11では「努めなければならない」と記載しています。つまり、義務ではなく努力義務です。
努力義務に法的な拘束力や罰則の規定はないため、自転車乗車時にヘルメットを着用していなくても逮捕や罰金はありません。
ただし、違反しても問題ないということではありません。法律に記載されたことで努力することが前提となるため、ヘルメット未着用の場合に、損害賠償請求や自転車保険で不利になることが考えられます。
自転車乗車時のヘルメット着用が努力義務になったことに伴い、全国の市区町村でヘルメット購入の補助金制度が設けられています。助成金額は2,000円で、安全基準を満たしたヘルメット(※)の購入が対象です。
市区町村によっては購入先(販売店)が指定されていますが、購入先を問わずオンライン申請が可能な場合もあります。申請期間などを含めて、市区町村の公式ホームページを確認してみましょう。
(※)「SG(製品安全協会)」や「JCF(日本自転車競技連盟)」の基準を満たしたもの。
超軽量ヘルメット FRP製 エアライトS ST-103B-JPZ
トラックの荷役作業にかかわる労働安全衛生規則が一部改正され、ヘルメットの着用義務の範囲が拡大しました。
これまでの労働安全衛生規則でも、最大積載量5トン以上のトラックではヘルメットの着用が義務付けられていました。2023年にその一部が改正され、ヘルメット着用義務の対象となる条件が拡大しました。追加された条件は次のとおりです。
引用:厚生労働省「トラックでの荷役作業時における 安全対策が強化されます。」
トラック運送業の労災において、荷台への昇降時の転落が40%と最も多いことが、規則改正の背景にあります。
平ボディ・ウイング等が開くトラック、あるいはテールゲートリフターを使用する場合は、2トン以上5トン未満のトラックもヘルメット着用の対象となるため注意が必要です。
自転車のヘルメット着用とは違い、努力義務ではなく義務であるため違反時は罰則があります。事業者と労働者双方の義務で、罰則規定は次のとおりです。
ただし、業務上過失致死の場合は刑法が適用され、5年以下の懲役もしくは禁固、または50万円以下の罰金に処されます。
労働安全衛生法に違反した場合の管轄は労働基準監督署、業務上過失致死の場合の管轄は警察署です。
産業におけるヘルメットの着用義務は次のような法律や規則で定められています。
道路交通法
労働安全衛生規則
クレーン等安全規則
各種通達
道路交通法は道路の安全と円滑な利用を図ることを目的とした法律です。国家公安委員会(警察庁)が所管しています。
労働安全衛生規則は労働者の安全と健康を確保することを目的とした規則(省令)です。厚生労働省が策定し、都道府県労働基準局長が管轄しています。
クレーン等安全規則は労働安全衛生法に基づいて定められたものです。移動式クレーン・建設用リフト・簡易リフト・つり上げ荷重・デリック・エレベーター使用時の安全規則を定めています。
厚生労働省をはじめとする各省庁からの通達でも、ヘルメット着用義務を定めています。通達の具体例には「高所作業車に係る労働災害の防止について」や「荷役運搬機械の安全対策について」などがあります。
厚生労働省では産業用ヘルメットを保護帽と記載しています。厚生労働大臣が定める型式検定に合格した保護帽には、検定取得を示すラベルが貼られており、用途に応じて次の3種類に区分されます。
飛来・落下物用
墜落時保護用
電気用
3つの区分ごとに各種規則・通達で着用義務のある作業が指定されています。詳しく見ていきましょう。
飛来・落下物用保護帽は低所での作業で着用するものです。労働安全衛生規則・クレーン等安全規則・各種通達で着用義務が定められています。
労働安全衛生規則では、次のような作業で産業用ヘルメット(保護帽)の着用を義務付けています。
引用:厚生労働省「その保護帽(産業用ヘルメット)正しく使用してますか?」
クレーン等安全規則では、次のような作業で産業用ヘルメット(保護帽)の着用を義務付けています。
引用:厚生労働省「その保護帽(産業用ヘルメット)正しく使用してますか?」
各種通達によって、次のような作業における産業用ヘルメット(保護帽)の着用を義務付けています。
引用:厚生労働省「その保護帽(産業用ヘルメット)正しく使用してますか?」
墜落時保護用の産業ヘルメットは、高所作業や転倒のリスクが高い作業で着用が義務付けられている保護帽です。飛来・落下物用とは異なり、ヘルメットの外側(帽体)と頭に触れるハンモックの間に、衝撃吸収ライナーが入っています。
労働安全衛生規則と通達による規定で着用義務が定められています。
労働安全衛生規則では、次のような作業で産業用ヘルメット(保護帽)の着用を義務付けています。
引用:厚生労働省「その保護帽(産業用ヘルメット)正しく使用してますか?」
各種通達によって、次のような作業における産業用ヘルメット(保護帽)の着用を義務付けています。
引用:厚生労働省「その保護帽(産業用ヘルメット)正しく使用してますか?」
電気用保護帽の着用義務を定めている規則は労働安全衛生規則です。高圧活線、低圧活線で電気用保護帽の着用義務の条件が異なります。
労働安全衛生規則では、次のような作業で産業用ヘルメット(保護帽)の着用を義務付けています。
※参考 【特別高圧】 ⇒交流・直流ともに 7,000 ボルトを超えるもの
引用:厚生労働省「その保護帽(産業用ヘルメット)正しく使用してますか?」
自転車乗車時のヘルメット着用は努力義務であり、罰則はありません。しかし、努力することが法律で明示された以上、万が一事故を起こしたときの損害賠償請求や補償が不利になる可能性があります。
また、運送業や建設業などの産業においても、ヘルメットの着用義務があります。産業の場合は努力義務ではなく義務であるため、違反すると罰則の対象です。ヘルメットが必要な作業と適切なヘルメットの種類を把握し、着用を徹底しましょう。
ヘルメットの選び方に迷ったときは、次の記事をぜひ参考にしてください。