紫外線対策として、日焼け止めと同様に注目されるのがUVカット機能付きのウェアです。とくに紫外線がピークを迎える6~8月では、愛用者も多いのではないでしょうか。しかし、商品性能や購入時期によってはUVカットが十分に機能していない可能性があります。
本記事では、UVカット機能付きウェアの仕組みから性能の指標、色や素材による差まで詳しく解説します。UVカット機能の付加方法による耐用年数の違いも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
UVカットは紫外線(UltraViolet)を遮ることです。「カット」と称していますが、実際には紫外線を吸収または散乱させることで、肌や目に到達するのを防いでいます。
なお、紫外線(UV)は人が色を認識できる光の波長(可視光線)の下限360~400nmよりも短い400nm以下の波長の光のことです。
紫外線の中でも次の3種類に分類されます。
UV-Cはそもそも地上に届かないため、UVカットの商品はUV-AとUV-Bが対象です。生物に与える影響は、UV-AよりもUV-Bの方が高いとされています。
UVカットは紫外線を吸収するタイプと散乱させるタイプに分かれます。それぞれの仕組みを解説します。
紫外線を吸収し、熱や赤外線に変化させて放出することで紫外線をカットする仕組みです。次のような成分が紫外線吸収剤として使われています。
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル
メトキシケイヒ酸オクチル
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル
t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン
パラメトキシ桂皮エチルヘキシル
ポリシリコーン-15
成分によって吸収できる紫外線が異なるため、UV-A吸収剤とUV-B吸収剤が併用されることも少なくありません。
紫外線を反射・散乱させる物質や構造によって、紫外線が肌に到達するのを物理的に防ぐ仕組みです。紫外線散乱剤には次のようなものがあります。
酸化チタン
酸化亜鉛
特殊セラミック
UVカットウェアでは、紫外線散乱剤の使用だけでなく、繊維の構造を工夫することで紫外線の散乱を可能にした商品もあります。
UVカットウェアの性能を見るときの指標に、UVカット率とUPFがあります。それぞれの意味と数値ごとの性能の目安を解説します。
UVカット率(紫外線遮蔽率)は、UV-BとUV-Aを遮断できる割合をパーセンテージで示したものです。UVカットを目的としたウェアを購入するなら、最低でもUVカット率90%以上のものを選びましょう。UVカット効果が高いものは99%以上です。
UPFは紫外線防護係数(Ultraviolet protection factor)のことで、衣服を着用したときに肌が紫外線の影響を受ける時間を示したものです。「UPF30」と表記した場合、素肌の状態で受ける紫外線の影響に達するまで、約30倍の時間がかかることを示しています。
UPFの格付けと性能の目安は次のとおりです。
日差しが強い季節に屋外で着用するためのウェアを選ぶときは、UPF30以上を基準にしましょう。
なお、化粧品の場合はUPFではなくSPF(UV-B)やPA(UV-A)という指標を用います。
UVカット機能付きのウェアは、UVカット加工のものとUVカット素材で作られたものに分かれます。違いは次のとおりです。
さらに詳しく解説します。
UVカット加工は、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を混ぜた樹脂で、生地表面をコーティングしたものです。ポリエステルやナイロンなどの化学繊維だけでなく、綿をはじめとした天然繊維を加工できるため、幅広いUVカットウェアで用いられています。
UVカット素材のウェアと比べて安価であることもメリットです。しかし、コーティングが剥がれやすく、UVカット性能はワンシーズンで劣化する傾向にあります。
UVカット素材はポリエステルやナイロンなどの化学繊維を作る際に、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を練り込んだものです。天然繊維ではこの方法を使えません。
コーティングよりもUVカット性能の耐久性が高いことがメリットで、3年程度は効果が持続します。なお、価格帯はUVカット加工のものと比べて高額です。
UVカット加工またはUVカット素材のウェアであれば、何色でも問題なく紫外線を遮れますが、UVカット機能がないウェアの場合は色選びに注意しましょう。
最も紫外線を通しにくいとされているのは黒です。ただし、黒は太陽光のエネルギーを吸収して熱に変換しやすいため、暑く感じやすいというデメリットもあります。
意外にもUVカット効果が高い色は黄色です。黒ほどではありませんが、その他の色と比べて紫外線を通しにくい色といわれています。その他、ネイビーやダークグレーなどの濃い色も紫外線対策に有用です。
逆に紫外線を通しやすい色としては、白やパステルカラーが挙げられます。
紫外線を通しやすい繊維素材、通しにくい繊維素材は次のとおりです。
天然の繊維素材は紫外線を通しやすいため、UVカット加工(コーティング)がなされていないものは紫外線対策に向きません。
一方、ポリエステルやナイロンなどの化学繊維は紫外線を通しにくいため、紫外線対策に有用です。ただし、化学繊維は臭いが残りやすく、吸汗性が低いといったデメリットもあります。夏のウェアを選ぶときは、メリット・デメリットを比べて総合的に判断しましょう。
基本的には厚手の方が紫外線を防ぎやすいものの、薄手の生地でもUPF50+の商品はあります。大きく影響するのは生地の厚みよりも編み目の密度です。編み目が詰まっている方が紫外線を通しにくくなります。
UVカットウェアは肌が露出した部分に降り注ぐ紫外線までは防げないため、着用すれば万全というわけではありません。紫外線が強い日は、UVカットウェアと日焼け止めを併用しましょう。
以下は紫外線が人体に及ぼす影響度を示したグラフです。
紫外線の影響が大きいのは夏であることがわかります。ただし、冬でも影響が0になるわけではないため、長時間の屋外作業ではUVカットウェアの着用を検討しましょう。
UVカットの成分には紫外線吸収剤と紫外線散乱剤があり、紫外線を防ぐ仕組みが異なることがわかりました。また、UVカット加工(コーティング)とUVカット素材では、耐用年数に差があります。
UVカット率やUPFといった指標を確認しつつ、加工方法や素材、色にも注目してみましょう。とくに紫外線がピークを迎える夏場は、UVカット率90%以上、UPF50+、濃い色のウェア推奨です。UVカット素材のものであれば、翌年も着用できます。
本記事でご紹介した商品を参考にしつつ、最適なUVカットウェアで夏を快適に過ごしましょう。