ビジネスやフォーマルの場に欠かせないワイシャツには、襟の形、裾のデザイン、生地の種類によってさまざまなタイプがあります。シーンやマナーに合ったワイシャツを選ぶことが大切ですが、どのようなワイシャツがどのシーンに適しているのか判断するのは難しいものです。
そこでこの記事では、ワイシャツの襟型・裾型・生地の特徴をそれぞれ具体的に解説します。さらに、ふさわしいシーンや不向きなシーン、似合う体型や着こなしのポイントについても紹介します。ワイシャツ選びの参考にしてみてください。
ワイシャツは襟の形によって印象や着用シーンが大きく変わります。ここでは、代表的な13種類の襟型について、それぞれの特徴やおすすめの着用シーンを紹介します。
レギュラーカラーは襟の開きの角度が70~90度程度の、スタンダードな襟型です。ビジネスからフォーマルまで幅広く対応しているので、1枚は持っておきましょう。とくに面接や商談、対面営業など、清潔感や信頼感をアピールしたい場面に適しています。
なお、ネクタイを結ぶ場合は、結び目をコンパクトにすると収まりが良くなります。
ワイドカラーは襟の開きが100〜140度と広く開いており、首回りがすっきり見えるのが特徴です。肩幅が広い人、がっしりとした体型の人にもよく似合うデザインといえます。
レギュラーカラー同様、ビジネスや冠婚葬祭などTPOを選ばず着用可能です。少しカジュアル寄りのスタイルにも取り入れやすく、様々なシーンで着回せます。
襟の開きが大きいため、ネクタイとのバランスをとりやすいのも魅力です。ネクタイの結び目がよく見えるので、ウィンザーノットなど太めのネクタイの結び方もよく似合います。
セミワイドカラーは、襟の開きが100度前後で、レギュラーカラーとワイドカラーの中間的な位置づけの襟型です。程よい襟の開き具合で汎用性が高いため、人気がある襟型です。
どんなタイプのスーツに合わせても相性が良く、Vゾーンが美しく見えます。
ビジネスからフォーマルまで、幅広い場面で活躍します。オールマイティーに着こなせるワイシャツが欲しいなら、セミワイドカラーを持っておくといいでしょう。
ホリゾンタルワイドカラーは、180度、ほぼ水平に襟が開いているのが特徴です。なお、襟が190度以上開いているものはカッタウェイカラーと呼ばれます。
ノーネクタイでも様になり、第一ボタンを外してもすっきりとかっこよく決まるデザインです。そのため、クールビズやオフィスカジュアルに取り入れるのがおすすめです。ネクタイを締める場合は、結び目を大きめにしてバランスをとりましょう。
ビジネス以外にも、ジャケットと合わせて普段使いしてもスタイリッシュに着回せます。ただし、ややカジュアル感が強いので、フォーマルや冠婚葬祭での着用は避けましょう。
ボタンダウンカラーは、身頃についたボタンで襟先を留めるタイプの襟型です。襟先がボタンで固定されているため、ノーネクタイや第1ボタンを外しても綺麗なシルエットを保てます。
ただし、カジュアル感があるため、フォーマルシーンやネクタイ必須の場面には不向きです。クールビズやオフィスカジュアルなど、リラックスした雰囲気のビジネスシーンで活躍します。
ボタンの色やボタンホールのステッチなど、ファッション性が高いのも魅力です。シャツ一枚でおしゃれ感を演出したい場合におすすめです。ジャケットに合わせてスマートカジュアルな装いを楽しむのもいいでしょう。
「ドゥエボットーニ」とはイタリア語で「2つのボタン」という意味です。ワイシャツの第一ボタンの部分に、ボタンが2つ並んでいるデザインをドゥエボットーニカラーと呼びます。
台襟の帯部分が広く、首が程よく隠れるデザインなので、首の細さや長さが気になる方にもおすすめです。ファッション性が高く、ノーネクタイでもおしゃれに決まります。
ネクタイを合わせるときは、襟の高さに合わせて結び目を大きくすると華やかさがアップします。ビジネスだけでなく、食事会や結婚式の二次会などのパーティーシーンで映えるでしょう。
※画像はボタンダウンタイプなのでフォーマル向きではありません。
スタンドカラーは、襟の折り返しがない立ち襟タイプのシャツです。一方、バンドカラーはさらに襟の高さが低く、ノーカラーシャツに帯状の布が付いたデザインとなっています。
どちらも首元がすっきりと見え、ソフトでやわらかい雰囲気なのが特徴です。ジャケットやスラックスと合わせればスタイリッシュに、カーディガンやチノパンと合わせればカジュアルに決まるので、幅広いコーディネートを楽しめます。
ただし、なお、ネクタイを締められないので、オフィスカジュアルやプライベート向きです。
ナローカラーは襟の開きが60度以下と狭く、襟自体も短くて小さいデザインです。「ショートポイントカラー」や「スモールカラー」とも呼ばれます。
襟が小さく主張が控えめなので、小柄な方やスリムな方に特によく似合います。
ネクタイを着用する場合は、襟の開きが狭いため、細いネクタイを選んで結び目を小さくしましょう。カジュアルな印象が強くなるため、冠婚葬祭などのフォーマルな場面には向いていません。
おしゃれな柄を選んだり、華やかなネクタイと合わせたりすれば、オフィスカジュアルだけでなく、結婚式の二次会などのパーティーシーンで活躍します。
タブカラーは、左右の襟を結ぶ紐(タブ)がついているデザインのシャツです。襟のタブがネクタイを持ち上げることで、立体的に見せる効果があります。襟が安定し、崩れにくいのも魅力です。
ノーネクタイだとタブが見えてしまうので、ネクタイを着用することが前提となります。ビジネスでも着用可能ですが、華やかでエレガントな印象が強いため、ビジネスシーンによっては華美になりすぎる場合もあります。
結婚式などフォーマルでドレッシーなシーンでの着用におすすめです。
ウィングカラーは、首周りは立ち襟となっており、襟先のみ折り返されているデザインのものを指します。折り返した襟先が「鳥の翼」のように見えることに由来しています。
通常のネクタイを合わせることはありません。蝶ネクタイやボウタイ、アスコットタイと組み合わせるのが正式なスタイルです。
タキシードや燕尾服などのフォーマルスーツを着用する場合に選ぶワイシャツです。
ラウンドカラーは、襟先が直線ではなく曲線にカットされているものを指します。丸みのある襟先で、やわらかくやさしい雰囲気があるのが特徴です。
ネクタイを合わせることも、ノーネクタイで着用することもできます。ややカジュアルな印象があるため、フォーマルなビジネスシーンには不向きです。
クールビズや、リラックス感のある打ち合わせ程度のビジネスシーンに適しています。
襟羽根にカラーピンを通す穴がついているものをピンホールカラーと呼びます。カラーピンを装着し、その上からネクタイを通すことで、結び目を持ち上げて立体的に見せるデザインです。
タブカラーと形状が似ていますが、タブカラーの方がややカジュアル寄りで、ピンホールカラーの方がよりドレッシーな位置づけとなっています。
ビジネスでも着用できますが、やや華美な印象があるため、場所や雰囲気を選ぶ必要があるでしょう。ノーネクタイにしてカラーピンを主役にする着こなしもおしゃれです。
結婚式の二次会などのパーティーシーンにおすすめです。
台襟がなく、襟本体と前身頃が1枚の生地でつながっているデザインのものをワンピースカラー、またはイタリアンカラーと呼びます。
台襟がないため、ネクタイは装着できず、ノーネクタイが前提となります。第一ボタンを外して着用すると、襟元がきれいに開くのが特徴です。クールビズにおすすめのワイシャツです。
結婚式の二次会などではアスコットタイを合わせると、華やかでドレッシーな着こなしができます。
続いては、ワイシャツの裾の形と長さ、さらにタックインシャツ・タックアウトシャツについて解説します。
ラウンドカットは着丈が長めで、裾が半円型になっているタイプです。一般的に、スーツを着る時に着用するワイシャツはほとんどのものがラウンドカットとなっています。
一方ボックスカットは着丈が短めで、裾が直線のものを指します。ビジネス用のワイシャツではあまり見かけず、カジュアルシャツに多く見られるタイプです。
ビジネスシャツかカジュアルシャツか判別しにくいデザインのシャツは、裾の形でどちらなのか判断するのもひとつの方法です。
シャツの裾をズボンの中に入れることをタックイン、外に出すことをタックアウトと呼びます。
タックインシャツとタックアウトシャツの違いとして、裾の長さが挙げられます。タックインシャツはお尻が隠れるくらい長めに作られているのが特徴です。
タックアウトシャツは、ズボンの外に出してもバランスよく着こなせるように、タックインシャツよりも短くなっています。
裾が長いラウンド型のタックインシャツの中には、左右の丈は短く、前後の丈が長くなっているものがあります。この形状は、かつてヨーロッパではワイシャツが下着を兼ねていたことのなごりだと言われています。前後をボタンで合わせ、パンツ代わりにしていました。
そのため、格式のある場所では裾の長いシャツをタックアウトで着ることは避ける傾向にあります。下着を表に出している状態になってしまうからです。
ここでは、ワイシャツの生地別に代表的な9種類を詳しく解説します。生地によって与える印象や着こなし、適した季節などが異なりますので、ぜひチェックしましょう。
オックスフォードシャツは、ブロードシャツと比べるとややカジュアル寄りではありますが、ビジネスシーンにも対応できる人気のワイシャツです。
オックスフォードクロスは縦糸と横糸をそれぞれ2本ずつ引き揃えて織られています。糸が1本の生地と比べてへたれにくく、丈夫なのが特徴です。シワになりにくく、自宅の洗濯機で気軽に洗えるのも長所のひとつです。
また、縦糸と横糸の間に適度な隙間があるため、通気性と肌離れに優れているのもメリットです。汗をかいても肌に張り付くことなく、さらりと快適に着用できます。
通気性に優れていながらも生地はやや厚手なので、季節を問わず一年中着用できるのも魅力と言えます。
「ブロード」はアメリカでの呼び方で、イギリスでは「ポプリン」と呼ばれています。日本では区別するために、細い糸で作られたものをブロード、細い糸で作られたものをポプリンと呼ぶことがあるようです。
ブロードは薄手ながらハリと程よい光沢感がある生地で、シャツの生地の中でもっともフォーマルなものと位置づけられています。とくに綿100%のブロードシャツは、ビジネスシーンはもちろん、冠婚葬祭にも着用できるシャツです。
ポリエステルの場合はややフォーマル感が薄れるため冠婚葬祭向きではありませんが、ビジネスシーンでは活躍します。しわや型崩れを防ぎやすいため、仕事着におすすめです。
オックスフォードシャツは、ブロードシャツと比べるとややカジュアル寄りではありますが、ビジネスシーンにも対応できる人気のワイシャツです。
オックスフォードクロスは縦糸と横糸をそれぞれ2本ずつ引き揃えて織られています。糸が1本の生地と比べてへたれにくく、丈夫なのが特徴です。シワになりにくく、自宅の洗濯機で気軽に洗えるのも長所のひとつです。
また、縦糸と横糸の間に適度な隙間があるため、通気性に優れているのもメリットです。一般的なワイシャツは、汗をかくと生地が肌に張りつくことがありますが、オックスフォードシャツなら肌離れがよく、さらりと快適に着用できます。
通気性に優れていながらも生地はやや厚手なので、季節を問わず一年中着用できるのも魅力と言えます。
ドビー生地は「ドビー織機」で織られたもので、小さな織り柄や幾何学模様が施されているのが特徴です。
ベーシックな平織のブロードシャツと比べると、模様や光沢感があるぶん、よりドレッシーな印象を与えます。上品でさりげないおしゃれを楽しめるワイシャツです。
ビジネスシーンにはストライプ柄やブロックチェック柄、幾何学模様のデザインがおすすめです。特に光沢感のあるものは、結婚式などのパーティーシーンにも適しています。
ヘリンボーンは、斜めの線が交互に入った、V字が連続するような模様が施された生地です。模様の見た目がニシンの骨(Herring bone)に似ていることが名称の由来となっており、別名「杉綾織」とも呼ばれています。
さりげないデザインと上品な光沢感が特徴で、ビジネスシーンからパーティーシーンまで幅広く活躍します。プレーンなワイシャツよりもシックで高級感があるため、大人っぽく落ち着いた印象を与えたい時にもおすすめです。
シアサッカー生地は、表面に多数の凹凸があるのが大きな特徴です。この凹凸によって肌への接触面積が少なくなり、汗をかいても張り付かず快適に着用できます。涼しげな素材のため、春夏向けのワイシャツにおすすめです。
ビジネスシーンでも着用できますが、ややカジュアルな印象があります。クールビズやオフィスカジュアルのスタイルに取り入れると良いでしょう。
カノコ(鹿の子)素材も表面に凹凸があるのが特徴ですが、織物ではなくニットに分類されます。凹凸により汗ばんでも肌離れがよく、編み目が粗いため通気性にも優れています。シアサッカーシャツと同じく、夏に人気のワイシャツです。
ニット素材なのでストレッチ性が高いのも特徴として挙げられます。また、シワになりにくいため、アイロン掛けがほぼ必要ないのも魅力のひとつです。
やわらかくリラックス感があるため、クールビズやオフィスカジュアル向けに着用するのがおすすめです。
シャンブレー生地は、縦糸に色糸、横糸に白糸(または縦糸と異なる色糸)を使用して織られた平織の生地です。
表面には「霜降り効果」と呼ばれる色ムラがあり、光の当たり方によって独特の光沢やツヤが感じられるのが特徴です。
淡く落ち着いた色合いと上品な光沢感が、高級感を演出します。薄手でなめらかな肌触りに加え、通気性にも優れているため、春夏に人気の素材です。
もともとワークウェアに使われていたため、ビジネスシーンにはややカジュアルな印象があります。オフィスカジュアルとして取り入れるのがおすすめです。
ダンガリー生地はシャンブレー生地とは逆に、縦糸に白糸、横糸に色糸を使用しているのが特徴です。また、シャンブレー生地が平織りなのに対し、ダンガリー生地は綾織となっています。
インディゴブルーの糸がよく使用されるため、デニム生地と似た印象があります。薄いデニムをダンガリーと呼ぶこともあるようですが、デニムはシャンブレー同様、縦糸に色糸、横糸に白糸を使用しているため、厳密には異なる素材です。
ダンガリーシャツは薄手で軽く、通気性に優れています。また、生地が丈夫で耐久性があるのも魅力のひとつです。
カジュアルな雰囲気が強いため、フォーマルやビジネスには向きません。オフィスカジュアルや軽作業などのワークウェアにおすすめのワイシャツです。
リネン生地は、ハリがあり、さらっとした肌触りの「シャリ感」が特徴の生地です。綿素材と同様に汗をよく吸収し、さらに速乾性が高いため、夏にぴったりの素材です。
カジュアルな印象やリゾート感が強いため、オフィスカジュアルやクールビズ向けのワイシャツとして適しています。
しわが付きやすい素材のため、職場で着用するならアイロン掛けがほぼ必須となるでしょう。少し手間はかかりますが、高温多湿な日本の夏でも快適に着られるワイシャツです。
ワイシャツの種類は、襟の形や裾の形、使用されている素材によって細かく分類されます。
すべてのワイシャツが同じというわけではなく、ビジネスシーンの雰囲気やTPOに応じて適切なものと不向きなものがあります。特にビジネスの場では、シーンに合わないワイシャツを着ていると、信頼感を損ねてしまうこともあるかもしれません。
例えば、ビジネスや冠婚葬祭にはセミワイドカラーシャツやブロードシャツ、クールビズにはボタンダウンカラーシャツやシャンブレーシャツなどがおすすめです。ウィングカラーのように、フォーマル専用でビジネスの場では着用しないワイシャツも存在します。
場の雰囲気やビジネスシーンに合わせてワイシャツを上手に使い分けられるようになると、毎日のコーディネートもより楽しくなるでしょう。ぜひワイシャツ選びの参考にしてみてください。