静電気は冬から春先にかけて多い悩みです。ドアや車に触れたときにバチッとする痛みが生じたり、埃や花粉の付着に悩まされる人は多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、服の静電気を抑える7つの対処法を詳しく解説します。前半では静電気の原因と静電気による影響・危険性も解説しているので、ぜひ参考にしてください。
静電気に悩まされる主な原因を次の3つに分けて解説します。
服の摩擦
乾燥
帯電体質
静電気が発生する理由のひとつが摩擦です。異なる物をこすり合わせたときに電子が移動することで起こります。
物質はプラスの電荷をもつ原子核とマイナスの電荷をもつ電子で構成されています。物質単体ではプラスとマイナスのバランスがとれた、中性の状態です。
しかし、異なる物をこすり合わせると、電子が片方に移動します。電子を奪う側はマイナスの電荷が多くなり、奪われた側はプラスの電荷に傾いた状態です。この、バランスが崩れた状態を静電気と呼びます。
セーターはプラスの電荷を帯電しやすいウール、あるいはマイナスの電荷を帯電しやすいアクリルで作られています。電荷が偏りやすい素材なので、異なる物質と摩擦・接触した際に静電気が生じやすいといえます。
プラスに帯電しているものがマイナスに帯電しているものに触れると、マイナスとプラスが引き合ってバランスをとろうとします。このときに生じる電子(マイナス)の移動が放電であり、物質間に電流が生じます。
静電気で人が痛みを感じるのは、電子の移動量が多いときです。感電することで痛みを感じます。
冬に静電気に悩まされることが多いのは、乾燥によるものです。
電気を通しやすい水が物質の表面に付着すると、物質がためこんだ電子が空気中に放出されます。そのため、湿気が多い時期は物質の電荷の偏りを水分が防いでくれるので、静電気が生じにくくなっています。
しかし、気温が低くなると空気中の水分の飽和量(飽和水蒸気量)が少なくなり、乾燥します。つまり、冬は物質の表面の水分も少ない状態になるということです。ためこんだ電気が放出されず、他の物質と触れたときに静電気が発生しやすい状況といえます。
人も体質や体調の変化によって帯電しやすくなることがあるようです。体内の物質も電荷をもっており、通常はバランスがとれています。しかし、次のような要因で体調が悪くなると、体内のイオンバランスが崩れ、帯電しやすくなるとされています。
肌の乾燥
睡眠不足
暴飲暴食
ストレス
どんな服を着ても静電気に悩まされる場合は、帯電体質の可能性があります。規則正しい生活やストレスの発散を心掛けましょう。
静電気を防ぐ方法を見る前に、対策しないことで生じる影響や危険性を把握しておきましょう。
服や人の帯電のバランスが崩れていると、物に触れるたびに静電気によるバチッとした痛みが生じるため不快です。驚いた拍子に物を落としたり、体勢を崩したりすることも考えられます。ケガにつながるため注意しましょう。
静電気を帯びた布は近くの物に張り付こうとします。服が静電気を帯びていると、腕や足、腹部などにまとわりつくため、動きにくくなります。緻密な作業で邪魔になるほか、エプロンなどがまとわりつけば転倒の恐れもあるため、注意が必要です。
埃や花粉も電荷をもっているため、服が静電気を帯びた状態だと付着しやすくなります。汚れやアレルギー症状の要因になるため、埃や花粉が多い場所では静電気対策を心掛けましょう。
粉塵やガス、アルコールなどの揮発性の物質は、静電気によって引火・爆発する恐れがあります。ガソリンスタンドに静電気を取るためのパネルが設置されているのも、このリスクを低減させるためです。
なお、火気厳禁の物を取り扱う業務においては、JIS T8118適合の制電作業服の着用が義務付けられています。
精密機器を扱う際に静電気(放電)が生じると、基盤等をショートさせる恐れがあります。パソコン内の清掃やメモリの交換などをおこなう際には、あらかじめ金属に触れて放電しておきましょう。
なお、精密機器を扱う業務ではJIS適合の制電服の着用が求められる傾向にあります。
ここでは、服の静電気を発生しづらくするための7つの方法を解説します。なお、既に静電気が発生している場合には、金属に触れることで放電できます。
物質の特性によって、プラスの電荷を帯電しやすいものと-の電荷を帯電しやすいものに分かれます。服の素材では次のように区分されます。
電子(マイナス)を奪われる側がプラス、奪う側がマイナスです。プラスの電荷を帯電しやすい素材と-の電荷を帯電しやすい素材を組み合わせると、電子が移動しやすくなるため静電気が発生します。
ウールのセーターとポリエステルのシャツは、静電気が発生しやすい組み合わせの代表例です。トップスとアウターだけでなく、下着・マフラー・リュックなどの小物類も影響します。
プラス同士、マイナス同士であれば静電気は発生しにくいので、ポリエステルのシャツにはアクリルのセーターを合わせるなど、工夫しましょう。
綿と麻はマイナス寄り、絹はプラス寄りですが、ほとんど影響しません。これらの天然素材は水分を含みやすく、放電がスムーズだからです。このなかでも特に保水性に優れた綿は、静電気対策に有用です。
柔軟剤は繊維をコーティングし、やわらかくするためのものです。コーティングによって生地表面の滑りがよくなり、重ね着しても摩擦が生じにくくなるため、静電気を防ぐ効果を期待できます。
衣服用の静電気防止スプレーは、界面活性剤で生地表面をコーティングすることで、水分を含みやすくする仕組みです。空気中の水分を利用して、放電を促します。ドラッグストアやホームセンターで購入可能です。
静電気除去ブラシは金属等を利用した導電繊維でできており、放電または電荷を中和させることで静電気を除去するものです。一時的な効果に留まりますが、即効性はあります。
クリーニング店の静電気防止加工は、水分保持に有用な特殊な成分をコーティングする加工です。柔軟剤よりもさらに持続的かつ効果的な静電気抑制を期待できます。
室内で静電気を防ぐには、加湿も効果的です。空気中の水分が多くなれば、静電気は生じにくくなります。室温25℃以上、湿度20%以上になるように調整しましょう。加湿器の設置が難しい場合は、濡れタオルを干しておくだけでも効果があります。
作業服 帯電防止 カーボンオフセット VE50シリーズ 長袖ブルゾン(秋冬用)
最も効果的なのは制電服(制電作業着)の着用です。導電繊維や保水性の高い素材が練り込まれた生地によって随時放電を促し、静電気の発生を抑制します。
なお、服のまとわりつきを防ぎたい場合は一般的な制電性能で十分ですが、火気厳禁の物や精密機器を取り扱う場合は、JIS適合制電作業服を選びましょう。
静電気は質の異なる物同士で電子が移動した際に、電荷のバランスが崩れることで生じます。プラスの電荷になりやすいものと、マイナスの電荷になりやすいものを合わせると、静電気が発生しやすくなるため注意しましょう。
お気に入りのコーディネートがウールとポリエステルなど、相性が良くないものである場合は、柔軟剤や静電気防止スプレーの使用が効果的です。ただし、業務において静電気を完全に排除する必要がある場合は、JIS適合の制電服を着用しましょう。
とくに秋冬の寒くなる季節は静電気が発生しやすくなるので、今回ご紹介した静電気対策をぜひ実践してみてください。