タキシードは結婚式をはじめとする、フォーマルなシーンで着用される男性向けの礼服です。見覚えや聞きなじみのある服ですが、イメージはあっても具体的にどのような服をタキシードと呼ぶのかは、知らない人がほとんどではないでしょうか。
本記事では、タキシードのジャケットとパンツの特徴、スーツとの違いを詳しく解説します。デザインはもちろん、格式(適したシーン)や着こなしにも違いがあるので、ぜひ参考にしてください。
タキシードの特徴をジャケットとパンツに分けて解説します。
タキシードはスーツと似ていますが、襟の形・背面・ポケットに特徴があります。
タキシードの襟はピークドラペルまたはショールカラーです。
ピークドラペルは上襟と下襟を縫い合わせたライン「ゴージライン」と比べて、下襟が上向きに尖った襟を指します。スーツの一般的な襟であるノッチドラペルよりも、華やかな印象です。
ショールカラーは上襟・下襟の区別がなく、肩から掛けたようなラインの襟です。タキシードというときには、この襟をイメージする人が多いでしょう。
なお、右の写真のようにシルクサテンの生地があしらわれたデザインは拝絹(はいけん)と呼びます。
ジャケット Double Cloth by BRING MAteriAl NAD030
ベントは動きやすさを確保するために、ジャケットの背面に入れた切り込みのことです。スーツではベントが設けられますが、タキシードではベントなしが基本です。しかし、近年では利便性・快適性の観点からベントなしのタキシードも登場しています。
タキシードのポケットにはフラップ(蓋)がついていません。ジャケットのフラップは雨や埃の侵入を防ぐためのものなので、室内で着用するのが基本のタキシードには必要ないからです。
また、タキシードのポケット口には、シルクサテンの縁取りがあしらわれる傾向があります。
続いて、タキシードのパンツの特徴を側面・裾・ベルトループに分けて解説します。
タキシードのパンツの側面には、側章(そくしょう/がわしょう)と呼ばれるライン状の飾りがついています。一般的なパンツと比べて華やかさを演出できるほか、縫い目を隠すという役割もあります。
なお、準礼装であるタキシードの側章は1本ですが、より格式の高い燕尾服では2本です。ただし、これは日本の慣例であり、国際的には本数が指定されているわけではありません。
タキシードの裾は折り返しのないシングルタイプです。ダブルはカジュアルな印象なので、タキシードには適していません。
なお、スーツでは短めの丈もありますが、タキシードでは裾が靴に少しかかる程度に長い丈が基本です。
タキシードはベルトを着用せず、サスペンダーで肩から吊り下げるのが基本の着こなしなので、ベルトループは付いていません。
タキシードと合わせるタイやシャツ、チーフを解説します。
フォーマルな場でタキシードを着用するときは、蝶ネクタイが基本です。後述するウイングカラーシャツと合わせて着用します。
なお、友人のパーティや結婚式の2次会などのカジュアルな場であれば、一般的な形状のネクタイでも問題ありません。
ウイングカラーシャツは襟が高く、襟先が小さく折り返されたシャツです。蝶ネクタイと相性が良く、タキシードや燕尾服を着るときに着用します。
なお、フォーマルな場ではウイングカラーが適していますが、カジュアルな着こなしならレギュラーカラー(一般的な襟)のシャツでも問題ありません。
カマーバンドはタキシードと合わせる腰巻のことです。ベストを簡略化したもので、結婚式などのフォーマルな場では、カマーバンドを付けます。カマーバンド着用の際は、ジャケットを脱がないのがマナーです。
サスペンダーを腕に通した後、へその上からパンツ(ズボン)の上に被るようにカマーバンドを巻きましょう。なお、ベストを簡略化したものなので、カマーバンドとベストを併用することはありません。
よりフォーマルな着こなしをするなら、蝶ネクタイとともにポケットチーフを身に付けましょう。胸ポケットに入れることで、格式と華やかさが一段上がります。
フォーマルなチーフの入れ方は、3つの三角形が見える形状に畳むスリーピークスです。華やかさの演出やカジュアルダウンした着こなしを楽しむなら、ふんわりとした形状で差し込むパッフドが適しています。
上記までで解説したタキシードの特徴をもとに、スーツとの違いを解説します。
タキシードの襟はピークドラペルまたはショールカラーの2種類ですが、スーツの襟のデザインは多様で、襟のないノーカラータイプもあります。
また、動きやすさを向上させるベントがあるのはスーツで、タキシードにはありません。スーツのベントには、切り込みが1本のセンターベントと、2本のサイドベンツがあります。
スーツのパンツには側章がありません。側章があればタキシードまたは燕尾服用のパンツです。なお、スーツはベルトを着用するのが基本なので、ベルトループが設けられています。
タキシードの色は黒または濃紺が基本ですが、スーツではグレーや茶色などのさまざまな色が展開されています。チェック柄やストライプなど、柄も多様です。
格(フォーマル度)はスーツよりもタキシードが上です。タキシードにウイングカラーシャツ、蝶ネクタイ、カマーバンド(腰巻)を合わせると正礼装として着用できます。一方、レギュラーシャツ、ネクタイ、ベストと合わせれば準礼装としても着用可能です。
スーツは準礼装または略礼装です。披露宴などでは準礼装のディレクターズスーツやブラックスーツが選ばれます。ビジネスマンが着用するダークスーツは略礼装です。
なお、ファンシータキシードは黒・濃紺以外の色の生地を使ったタキシードです。チェック柄やストライプ柄のものもあります。通常のタキシードとは異なり、格は準礼装です。
結婚式では昼でもタキシードを着用しますが、基本的には夜に着用するものです。タキシードの襟「拝絹」は光沢のあるシルクサテンで、暗い場所でも顔を明るく見せるために採用されています。
スーツは、略礼装のダークスーツであれば時間帯を問わず着用できます。ただし、ディレクターズスーツ・ブラックスーツは昼向け、ファンシースーツは夜向けです。
タキシードは夜のフォーマルシーン向けの礼装であることがわかりました。ジャケット・パンツはスーツよりも華やかなデザインで、合わせるシャツやタイなどの着こなしも異なります。
結婚式・披露宴などではタキシード、スーツともに着用されますが、国際的かつ厳格な場ではタキシードの着用が求められることがあります。これを機に、タキシードの着用が適したシーンと着こなし方を覚えておきましょう。