スーツはビジネス・フォーマル・パーティーシーンに欠かせないものですが、多様なスーツがあるため、どのシーンでどれを選ぶべきか迷ってしまうことも多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、スーツの種類ごとの特徴と適したシーンを詳しく解説します。ジャケットのラペル(襟)・ボタン・ポケット、パンツ(スラックス)のタック・裾デザイン別の分類のほか、セット数や国別のデザインも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
ジャケットのラペル(襟)は主に次の4種類です。
それぞれを画像とともに詳しく解説します。
ノッチドラペルは最もスタンダードな襟の形状です。上襟と下襟の縫い目「ゴージライン」の延長上に下襟の先が来る形で、上襟と下襟の切れ込みがV字(ノッチ)の襟を指します。
TPOを気にせず着用できるため、迷ったときはノッチドラペルを選べば間違いありません。プライベート・ビジネス・フォーマルと幅広く活用できます。
ピークドラベルは、ゴージラインと比べて下襟の先が上向きに尖った形状の襟です。「剣襟」とも呼ばれています。
力強さと華やかさがあり、結婚式や祝賀会などのパーティシーンに適したデザインです。ただし、晴れの場のイメージが強いため、葬儀などの厳粛さが求められる場には向きません。
ショールカラーは、上襟と下襟の間に切れ目がない、なだらかな曲線型の襟です。肩から掛けているように見えるため、ショール(肩掛け)カラーと呼ばれます。タキシードやディナージャケットに多いデザインで、夜のパーティシーン向きです。
ノーカラージャケット Double Cloth by BRING MAteriAl NAD019
襟が付いていないジャケットをノーカラーと呼びます。首元がすっきりとしたデザインで、カーディガンのようにさまざまなインナーとコーディネートを楽しめます。プライベートやオフィスカジュアル向きです。
ジャケットはフロントボタンの位置によって、下記の2種類に分けられます。
シングル
ダブル
フロントボタンが縦1列に並んでいるジャケットをシングルと呼びます。カジュアル、ビジネス、冠婚葬祭など、オールマイティーに着用できるデザインです。
ダブルはフロントボタンが縦2列に並んでいるジャケットを指します。軍服のデザインが由来となっており、クラシカルで重厚感があるデザインです。
ダブルはボタンの並び方によって2種類に区分されます。2列が平行に並んでいる「オールインライン」と、上ボタンが離れていてV字に並んでいる「スプレッドアウト」です。
オールインラインはVゾーン(首から胸の開いた部分)が狭いため、タイトな着こなしに向いています。
主流はスプレッドアウトで、ゆったりした着心地です。なお、スプレッドアウトの場合、上のボタンは飾りなので、留めることはありません。
ボタンの数や留め方でも印象が変わります。1つボタン・2つボタン・3つボタンの違いを解説します。
1つボタンタイプは、最も格式が高くフォーマルな位置づけです。タキシードや礼服、パーティー用スーツに多く見られます。ボタンは必ず留めて着用しましょう。
Vゾーンが大きく開いているため、ドレッシーな着こなしを楽しめます。ただし、ビジネス用のスーツとしては一般的ではありません。
2つボタンは、スーツの中で最もスタンダードなタイプです。ビジネスから冠婚葬祭まで幅広いシーンで着用できます。
基本的に、留めるのは上のボタンのみで、下のボタンは外して着用します。「アンボタンマナー」と呼ばれる、ジャケットがしわになるのを防ぐための着こなしです。
3つボタンタイプはVゾーンが狭めになるため、誠実でクラシカルな印象を与えます。大人っぽい着こなしを楽しめるデザインです。
なお、3つボタンタイプは2種類あります。正面から見てボタンが3つ見えるタイプと、上のボタンがラペルに隠れている「段返り3つボタン」タイプです。
正面から見てボタンが3つあるタイプは、上2つのボタンを留め、3つ目のボタンは留めません。段返り3つボタンタイプは、2つ目のボタンのみ留めましょう。
ベントとは、ジャケットの裾に施されたスリットのことです。動きやすさを確保し、ジャケットのシルエットを美しく見せる役割があります。ベントの種類は次の3種類です。
センターベント
サイドベンツ
ノーベント
それぞれの特徴と、向いている体型や着こなし方を解説します。
ジャケット Double Cloth by BRING MAteriAl NAD030
センターベントは、背中の中央に1本のスリットが入っているタイプです。すっきりとした印象で、あらゆるシーンに対応できるオールマイティーなデザインといえます。シングルスーツに多く採用されており、ビジネススーツでは定番のスタイルです。
スリムな体型と相性が良く、タイトなサイズのものを選べば、スポーティーな着こなしを楽しめます。
サイドベンツは両サイドに1本ずつスリットが入っているタイプです。ベントが2本あるので、複数形で「ベンツ」と呼びます。
センターベントよりも腰回りのゆとりを確保しやすく、屈んでも引っ張られにくいため、シルエットが綺麗に見えます。移動や大きな動作が多い場面、体格が大きめな人と好相性です。
ノーベントはスリットがないタイプで、ヒップラインが目立ちにくいというメリットがあります。ただし、ベント入りと比べて動きにくいため、大きな動作や移動には向きません。なお、ノーベントでもストレッチ生地のものであれば、動きにくさを緩和できます。
ポケットの付け方にも種類があります。次の5種類を詳しく紹介します。
フラップポケット
スラントポケット
チェンジポケット
ノーフラップポケット
アウトポケット
フラップポケットは文字通り「蓋つきのポケット」ですが、その中でも平行に取り付けられたものを指します。ビジネススーツで最も多く見られるデザインです。日本名では「雨蓋隠し」とも呼ばれます。
年齢・役職・シーンを選ばず着用できるデザインなので、迷ったときはフラップポケットのジャケットを選んでおけば間違いありません。
AIR SWING SUITS TWIN STRIPE ジャケット EAJ379
スラントポケットは、蓋付きのポケットが斜め(slant)に取り付けられているものを指します。「スランテッドポケット」や「ハッキングポケット」とも呼ばれます。
乗馬用ジャケットが起源とされており、乗馬中でも中の物を取り出しやすいように、斜めに取り付けられました。
腰回りがすっきり見えるため、シャープ・スマートな印象に見せたいときに適したデザインです。
右ポケットの上に、もう1つの小さなフラップポケットが付いているのがチェンジポケットです。スラントポケットの場合は、チェンジポケットも斜めに付いています。
チェンジは「小銭」を意味し、もともとは硬貨などを入れておくためのポケットとして備えられていたことに由来しています。
ブリティッシュスタイルのスーツにみられる、クラシカルなデザインです。ウエスト位置を高く見せてくれる効果もあります。
蓋なしのポケットをノーフラップポケットと呼びます。ポケットの入口に共布で細くパイピングが施されているため「パイピングポケット」とも呼ばれます。
タキシードなどのフォーマルスーツに多く見られるポケットです。スーツの場合はややカジュアルな印象になるため、プライベートやオフィスカジュアルに向いています。
ジャケットにポケットを貼り付けたようなデザインのものをアウトポケットと呼びます。ビジネススーツではほぼ着用されることはなく、カジュアルなジャケットに多く見られます。
ここからは、スーツのパンツ(スラックス)の種類を解説します。
タックとは、スラックスのウエスト部分から下に向かって入っている「ひだ」のことです。タックの本数によって、次の3種類に分かれます。
ノータック
ワンタック
ツータック
パンツ Double Cloth by BRING MAteriAl NAM021
ノータックは、タックが1本も入っていないものを指します。すっきりとしたシルエットとなり、スタイリッシュに着こなせます。
タックが左右に1本ずつ入っているのがワンタックです。シングルタックとも呼ばれます。ノータックに比べて腰まわりに4cmほどのゆとりが生まれるため、動きやすいのが特徴です。
スラックスに立体感が出てシルエットがきれいに見えることから、スーツでは最もよく採用されているデザインです。
左右にタックが2本ずつ入っているのがツータックです。クラシック・上品な雰囲気があります。また、ワンタックよりもさらに幅広となるため、ゆったりとした着心地になるのも魅力です。
しかし、サイズが合っていないと、シルエットがだらしなく見えてしまうこともあります。ウエストサイズだけでなく、ヒップや股上のサイズも確認しましょう。
パンツ(スラックス)の裾上げには、以下2つの種類があります。
シングル
ダブル
それぞれ特徴を解説します。
シングルは、スラックスの裾を表側に折り返さず、縫い代を内側に縫い留める仕上げ方法です。
日本ではこのシングル仕上げが主流で、シングルジャケットと合わせると統一感が生まれます。ビジネスからフォーマルまで幅広いシーンに対応できる、汎用性の高い裾上げのスタイルです。
ダブルは、スラックスの裾を3.5cm〜5cmほど表側に折り返して留める仕上げ方法です。欧米ではこのダブル仕上げが主流となっています。
クラシカルで重厚感のある雰囲気を演出できる一方で、カジュアルさやアクティブな印象も与えるスタイルです。ビジネスシーンでは問題ありませんが、フォーマルシーンには不向きとされています。
スーツは、セット数によって以下の2種類に分けられます。それぞれの特徴を紹介します。
ツーピース
スリーピース
ツーピースは、ジャケットとスラックスの2点がセットになったスーツです。ビジネススーツなどに多く見られる、最も一般的なタイプです。
スリーピースは、ジャケットとスラックス、さらにベスト(ジレ)の3点がセットになったスーツのことです。「三つ巴」とも呼ばれています。
ベストは仕事中の体温調節に便利です。寒いときの保温はもちろん、暑い時にジャケットを脱いでもだらしない印象になりにくいのが魅力です。
一方、ベストがあることでやや重厚感や品格がある印象となるため、就活生や若手社員が着用するのには向いていません。面接や営業、目上の方と会う際にはツーピースが無難です。
スーツは、発祥した国ごとに、大きく以下の3つの種類に分けられています。
ブリティッシュ
イタリアン
アメリカン
それぞれのデザインや印象の違いについて解説します。
イギリス発祥のブリティッシュスタイルのスーツには次のような特徴があります。
しっかりした肩パッド
肩幅は広め
Vゾーンは浅め
生地は厚手・硬め
クラシックで伝統を感じさせる佇まいがあり、重厚感と品の良さを兼ね備えたデザインです。信頼感や誠実さをアピールできる正統派スタイルを楽しめます。
イタリアンのスーツには次のような特徴があります。
薄い肩パッド
広いVゾーン
軽やかな質感の生地
しなやかでエレガントな雰囲気を演出できるため、パーティーシーンで映えるスタイルです。
アメリカンスタイルはアメリカントラッドスタイルとも呼ばれます。次のような特徴があります。
薄めの肩パッド
ベント入り
ゆったりめ
ブリティッシュスタイルやイタリアンスタイルと比べるとカジュアルで、動きやすさを重視した作りになっています。
ここでは、スーツの代表的な柄3種類と、それぞれの印象を解説します。
無地
ストライプ
チェック
無地は、ビジネススーツとして最も定番のスタイルです。面接や商談などの重要なビジネスシーンはもちろん、フォーマルな場面でも幅広く活用できます。
柄物のシャツやネクタイと合わせやすいのも大きなメリットです。汎用性が高いので、一着は持っておいて損のないデザインといえます。
ストライプ柄はスタイリッシュな着こなしに適した柄です。細いストライプは上品さ、太いストライプには華やかさがあります。
また、一見すると無地のような「シャドーストライプ」も人気です。光が当たったときだけストライプが浮かび上がるため、控えめながら洗練された雰囲気を演出できます。
ただし、ストライプ柄は無地と比べてカジュアルであるため、冠婚葬祭には適していません。ビジネスシーンやパーティシーンで活用しましょう。
グレンチェックや千鳥格子のような細かい柄には、上品で落ち着いた雰囲気があります。ビジネスからフォーマルまで幅広いシーンで活用できるデザインです。
一方、大きめのチェック柄はクラシカルで遊び心のある印象を演出できます。ただし、カジュアルな印象が強いため、ビジネスシーンで取り入れる際には場面を選ぶ必要があるでしょう。
最後に、スーツに似ているテーラードジャケットとブレザーの特徴、スーツとの違いを解説します。
スーツは基本的に、ジャケットとスラックスがセットで販売されていますが、テーラードジャケットはジャケット単体の販売です。「テーラード(tailored)」と「仕立てられた」という意味で、ジャケットとしてのデザインや機能性にこだわって作られています。
色や柄の異なるスラックスとの組み合わせはもちろん、デニムパンツと合わせてもおしゃれになるアイテムです。
ただし、スーツよりもカジュアルなアイテムとされるため、ビジネスシーンでは着用できる場面が限られます。
ブレザーは、テーラードジャケットの一種に分類されます。イギリス海軍の軍服や、大学のボートクラブのユニフォームが起源とされており、日本では学生服やスポーツの審判用ジャケットとして広まりました。
生地の色は紺・黒・グレーが定番で、ボタンは金やメタルが主流です。ノーネクタイでもクラシカルで知的な雰囲気を演出できるため、コーディネートを引き締めるアイテムとして活用できます。
ただし、テーラードジャケットと同じく、スーツよりもカジュアルなアイテムとされるため、プライベートまたはオフィスカジュアル向きです。紋章やエンブレムが付いているタイプはビジネスには不向きなので避けましょう。
スーツはジャケットやパンツのデザインによって、印象が大きく変わります。
リクルートや面接、重要な会議や営業など、第一印象が大切なビジネスシーンでは、ノッチドラペルのツーピースといった定番スーツがふさわしいでしょう。
一方、オフィスカジュアルでスーツのおしゃれを楽しみたいなら、ベスト付きのスリーピースや、スラントポケット・チェンジポケットなど細部にこだわるのもおすすめです。
シーンやTPOに合わせたデザイン選びを意識することで、スーツスタイルをよりスマートに楽しめるようになります。ぜひ今回の内容を参考に、自分らしい一着を見つけてください。