涼しそうな見た目の服を購入したのに、汗で張り付いたり、熱がこもったりして不快な経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。生地の素材や織り方によって、着用に適した季節が異なるため、違いを知っておくと便利です。
本記事では、夏向きの涼しい生地の素材と織り方(種類)を詳しく解説します。後半では、夏に向かない素材や織り方も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
夏向きの素材は主に次の5種類です。
それぞれの素材の特徴を詳しく解説します。
麻(リネン)は夏向き素材の代表格です。吸汗性が高く乾くのも早いため、気化熱の作用によって体表面の熱を外へ放出してくれます。
熱伝導率も他の天然素材と比べて高く、温度の高いところから低いところへ熱を逃がせる涼感素材です。高温多湿の日本の夏に最適な素材といえるでしょう。
また麻特有の「シャリ感」と呼ばれる固めの質感が、見た目にも涼やかであるため、半袖シャツや甚平などの夏服で採用されています。
綿(コットン)は吸水性に優れた素材です。速乾性はないため大量の汗を吸うと重くなりますが、軽度の汗であれば蒸散と通気性によって涼しさを感じられます。また、汗や皮脂などの臭い成分が蓄積しづらいことも魅力です。
なお、夏は涼しさを感じられる一方で保温性もあるため、季節を問わず快適に着用できます。肌ざわりがやわらかで着心地が良いことも含め、幅広いウェアに使われている素材です。
ポリエステル自体は吸汗性が低く夏向きとはいえませんが、速乾性に優れており、機能を付加しやすい素材です。綿と混紡することで、綿の吸汗性と着心地、ポリエステルの速乾性と機能性を両立できます。
ポリエステルを混紡することで得られる機能性の代表例は次のとおりです。
吸汗速乾
消臭
UVカット
機能性を重視する場合は、綿・ポリエステル混紡が適しています。
レーヨンは服の裏地に使われることが多い、シルクのような光沢をもつ素材です。木材パルプを加工した再生繊維で水分を含みやすく、ひんやりとした涼感があります。通気性も良好です。
ただし、乾きづらく、しわになりやすいなど取り扱いが難しいため、レーヨン100%のウェアは多くありません。とくにトップスやボトムスに使われるときは、他の素材と混紡される傾向にあります。
リヨセル/テンセルはユーカリなどの木材パイプを溶かした再生繊維です。「テンセル」はイギリスのコートルズ社の登録商標であるため、他社製品の場合はリヨセルと呼びます。
リヨセル/テンセルの吸湿性は綿の1.5倍といわれており、速乾性・通気性も良好です。汗をかきやすい高温多湿の日も快適に過ごせるでしょう。ウェアだけでなく、シーツや枕カバーなどの寝具にもよく使われています。
生地の種類(織り方)にも注目すると、夏をさらに快適に過ごせます。夏向きの生地の種類は次のとおりです。
カノコ
シアサッカー
オックスフォード
シャンブレー
天竺
鹿の子(カノコ)はポロシャツに代表される生地です。ニット編みの一種で、網目の凹凸がはっきりしています。肌との設置が面ではなく点になるため、肌離れがよく、汗をかいてもべたつきを感じづらいことが魅力です。
シアサッカーは経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の凹凸がはっきりしています。糸を縮めて織る過程で、細かなしわが入るのも特徴です。糸の織りとしわで肌への接地面が小さくなるため、肌離れの良いサラッとした着心地を楽しめます。
なお、糸を縮めて織る方法は日本では「しじら織り」と呼ばれ、浴衣や作務衣、甚平などの生地に用いられています。
シャンブレーは染色した糸と白糸を使った、色ムラが魅力の平織り生地です。デニムに似ていますが、薄手で軽く、通気性に優れています。適度に光沢があり、カジュアルながらほどよく上品な雰囲気があるのも魅力です。
5.6オンス ヘビーウェイトTシャツ Printstar 00085-CVT
天竺は横方向の伸縮性が高い平織り生地です。動きやすさとフィット感に優れ、やわらかいため、肌に直接触れるTシャツやカットソーによく使われています。吸汗性の高い綿を使用したものも多いため、活動量の多い作業が快適になるでしょう。
オックスフォードは経糸と緯糸を、それぞれ2~6本まとめて織った、目の粗い生地です。空気が通りやすいため、ウェア内部の熱や湿気を放出できます。基本的には厚手で、インナーが透けにくいのも魅力です。ボタンダウンシャツによくつかわれています。
夏向きの素材・生地がわかったところで、今度は夏に向かないものを見ておきましょう。より快適なウェアを見つけやすくなります。
夏に向かない素材は次のとおりです。
ウール(毛)
アクリル
ナイロン100%
ポリエステル100%
ウールとアクリルはセーターやベストによく使われる素材です。ふわふわとした繊維は空気を含みやすく、肌と外気の間に空気の層を作るため、断熱性・保温性に長けています。秋冬には最適ですが、夏に着用するとウェア内の熱を放出できず、不快感が強くなるでしょう。
ナイロンは耐久性・撥水性があり、虫やカビに強いことからアウトドア用品でよく使われる素材です。しかし、吸汗できないため、夏のウェアには向きません。
ポリエステルは夏向けのウェアにもよく使われますが、ポリエステル100%は避けるのが無難です。速乾性はあるものの、吸汗性と通気性には劣るため、湿度や汗をかく量によってはべたつきを感じます。汗の臭い成分を蓄積しやすいこともデメリットです。
次の生地は夏には向きません。
フランネル
コーデュロイ
フリース
ジャガード
フランネルは羊毛などの短い繊維を紡いだ糸で織った生地です。繊維間の隙間に空気を含みやすく、保温性が高いため秋冬のウェアに使われます。
コーデュロイは縦方向の畝(うね)が特徴的な、パイル織りの生地です。タオルのようなパイルのループをカットして毛羽立たせ、あたたかみのある質感に仕上げています。麻や綿を使用したサマーコーデュロイという例外はありますが、通常のコーデュロイは秋冬向きです。
フリースは石油由来の合成繊維を使った、起毛の生地です。軽量ながら保温性が高いため、防寒用品に使われます。
ジャガードはジャガード織機で織られた生地です。柄を立体的に織り込めるため、高級感のあるジャケットやスカート、カーテン、バッグなどに使われます。しかし、織りの密度が高く通気性が悪いため、夏のウェアには適していません。
夏のウェアには、通気性や吸汗性に優れ、涼感のある麻・綿・レーヨン・リヨセル/テンセルなどの素材が適しています。これらの素材で作られた鹿の子やシアサッカーなどの夏向き生地のウェアなら、暑い日も快適に過ごしやすくなるでしょう。
一方、ウール混やポリエステル100%の生地は、見た目が涼しそうでも、実際には熱のこもりや汗によるべたつきが気になることがあります。デザインが気に入ったウェアでも、快適性を求めるのであれば、素材や生地の種類をチェックしましょう。