HACCPとは?7原則12手順から従来方式との違いまで詳しく解説

HACCPとは?7原則12手順から従来方式との違いまで詳しく解説

公開日: 2025年07月28日更新日: 2025年07月28日特集記事

HACCPは2021年6月1日に義務化された、食品の衛生管理方法です。義務化から数年が経過していますが、食品業界に新規参入する人にとっては、わかりづらい部分も多いのではないでしょうか。

 

そこで本記事では、HACCPとは何かを読み方から詳しく解説します。従来の衛生管理方法との違いや7原則12手順までわかります。併用される一般的な衛生管理方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。

 

HACCPとは

 

HACCPの読み方と正式名称

 

HACCPは「ハサップ」と読みます。正式名称は「Hazard Analysis and Critical Control Point」です。それぞれの単語の意味は次の通りです。

 

  • Hazard:危害(危害要因)

  • Analysis:分析

  • Critical:重要

  • Control:管理

  • Point:点

 

HACCPの概要を含めた詳細は次のとおりです。

HA(Hazard,Analysis):危害要因分析

 

原材料由来や製造過程で生じるHazard(危害要因)は次のようなものです。

 

  • 有害物質による汚染

  • 異物混入

  • 微生物・細菌の繁殖

 

このような危害要因を予測し、管理方法を明確化・ルール化することがHA(危害要因分析)です。分析結果に基づいて、CCP(重要管理点)を設定します。

 

CCP(Critical Control Point):重要管理点

 

CCPは食品製造における重要管理点です。加熱・冷却工程における温度管理と、包装時の異物検出などがあげられます。

 

また、CCPとは別に継続的な監視と記録の方法も設定します。万が一問題が発生したときに、どの時点でどのような変化によって問題が生じたかを迅速に明らかにするためです。

 

HACCPと従来の衛生管理の違い

 

従来の抜き取り検査方式とHACCP方式の違いは次のとおりです。

 

衛生管理方式

従来方式
(抜き取り検査)

HACCP

考え方

対処的

予防的

検査対象

完成品の一部
(サンプル)

工程全体
(原料~出荷)

問題発覚のタイミング

製品完成後

製造工程中

消費者へのリスク
(検査漏れのリスク)


(漏れやすい)


(漏れが生じにくい)

原因特定にかかる手間

×

(特定しにくい)

特定しやすい

導入コスト

(安い)

(高い)

問題発覚時の対応コスト

×

(費用が大きい)


(費用を抑えやすい)

 

従来の衛生管理では食品の製造から包装までの衛生管理基準・手順はメーカーに一任されており、包装したものを抜き取り検査することで食品の安全性を監視していました。そこで問題が発覚した場合は出荷を停止・商品を回収する対処的な方式です。

 

しかし、従来の抜き取り検査では、サンプル以外の製品の問題を発見できないため、検査漏れのリスクがありました。また、問題発覚後に「どの工程で問題があったか」を検証する手間がかかるほか、出荷停止・商品回収のコストが大きいという問題もありました。

 

一方のHACCPは予防的手法です。各工程において基準を設けて管理できるため、問題のある製品を大量に製造してしまう状況を防げます。問題がある製品が消費者に届くのを防げるほか、出荷停止・商品回収・破棄にかかる膨大なコストを削減できるということです。

 

検査工程の手間や人員増による導入コストの増大はデメリットですが、「安全な食品の提供」というブランディングも含めると、HACCPは企業にとっても有益な衛生管理方法といえます。

HACCPの7原則12手順

 

HACCPは、1993年にCodex(コーデックス、国際食品規格)委員会が策定した7原則12手順に準拠します。詳細は次のとおりです。

 

手順

原則

項目

具体例

1

HACCPのチーム編成

各部門の担当者を集めて話し合う

2

製品説明書の作成

原材料や添加物、包装の形態などを書き出す

3

意図する用途及び対象となる消費者の確認

誰がどうやって食べるか(加熱、非加熱等)を書き出す

4

製造工程一覧図の作成

原材料の受け入れから出荷までの一連の流れを書き出す

5

製造工程一覧図の現場確認

4で作った工程を実際の現場で確認し、適宜直す

6

1

危害要因分析(HA)の実施

製造工程ごとのリスクを考える

7

2

重要管理点(CCP)の決定

特に厳重な管理が必要な工程を見つけ出す

8

3

管理基準(CL)の設定

「〇℃以上、〇分間保つ」などの基準を決める

9

4

モニタリング方法の設定

8で決めた基準が常に達成されているかを確認する(検知、目視等)

10

5

改善措置の設定

基準を達成しなかった製品の区分け、原因の特定や復旧

11

6

検証方法の設定

記録の確認、改善措置や修正の必要性の確認

12

7

記録と保存方法の設定

HACCPに基づく作業日報などで記録を保存する

 

上記のように、手順6~12が原則1~7と同じ項目を指します。手順1~5は原則を実施するための準備に該当する部分です。

 

HACCPという単語自体はHAとCCPのみに触れていますが、実際はモニタリングや検証を含めた12手順によって衛生管理を実施することがわかります。

 

事業者によってHACCPの衛生管理が異なる

 

日本では令和3年(2021年)6月1日からHACCPに沿った衛生管理が義務化されましたが、事業者の業種や規模によって、「HACCPに基づく衛生管理」と「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に分かれます。それぞれを詳しく解説します。

 

HACCPに基づく衛生管理

 

取り組み

食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組

詳細

CodexのHACCP7原則に基づき、食品等事業者自らが、使用する原材料や製造方法等に応じ、計画を作成し、管理をおこなう。

対象事業者

  • 大規模事業者

  • と畜場

  • 食鳥処理場

 

「HACCPに基づく衛生管理」は主に大規模事業者を対象とした衛生管理レベルです。HACCPの7原則に基づいた計画と衛生管理を、事業者自らが設定して実施することが求められます。使用する原材料や製造方法に応じて衛生管理を最適化するためです。

 

参考:厚生労働省「HACCPに基づく衛生管理

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理

 

取り組み

取り扱う食品の特性等に応じた取組

詳細

各業界団体が作成する手引書を参考に、簡略化されたアプローチによる生成管理をおこなう

対象事業者

小規模な営業者等

 

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」は業界団体が作成し厚生労働省が確認した手引書の内容を実施すれば達成できるものです。「HACCPに基づく衛生管理」とは違い、事業者自らが設定する必要はありません。小規模な事業者の例は次のとおりです。

 

区分

食品製造・加工の施設と隣接した店舗で小売販売するもの

菓子・豆腐の製造販売、食肉・魚介類の販売

飲食店業または喫茶店等

そうざい・パンの製造、学校病院等以外の集団給食施設、調理機能のある自動販売機

容器包装した食品の貯蔵・運搬・販売

八百屋、米屋、コーヒーの量り売りなど

食品の取り扱いに従事する50人未満の事業者(食品に直接かかわらない事務員などは除いた人数)

 

参考:厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理

対象外の食品等事業者

 

HACCPは原則としてすべての食品事業者を対象としますが、下記に該当する場合は対象外です。

 

  • 農業・水産業における採取業

  • 食品または添加物の輸入業

  • 食品または添加物の貯蔵・運搬(冷凍、冷蔵倉庫業を除く)

  • 常温で長期保存可能な包装食品の販売業

  • 器具容器包装の輸入または販売業

  • 1回の提供食数が20食程度未満の集団給食施設

 

具体的には、農家や漁師などの採取業、スナックや缶詰などの常温保存可能な食品の輸入・仲卸・小売りなどは対象外といえます。

 

参考:厚生労働省「HACCP(ハサップ)

業界別HACCPの手引書

 

小規模事業者向けの「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」では、各業界団体が作成した業界別の手引書があります。厚生労働省が公開している手引書は115種類あるため、その一部を列挙します。

 

 

これらの手引書は厚生労働省のサイト「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」のページにある「食品等事業者団体が作成した業種別手引書」からアクセスできます。表紙または50音順で探しましょう。

HACCPは「一般的な衛生管理」と併用する

 

食品等事業者には、「HACCPに沿った衛生管理」と同時に「一般的な衛生管理」に関する基準に基づく衛生管理が求められます。ここでは、一般的な衛生管理の概要と14の基準を解説します。

 

一般的な衛生管理とは

一般的な衛生管理とは、食品の安全性を確保するために必要とされる基本的な衛生管理のことです。施設と従業員の清潔の保持だけでなく、温度管理や従業員への教育も含めた14項目の基準が設けられています。

 

ただし、具体的な方法には踏み込まない「概念」を示したものであるため、具体的な計画・手順の作成が必要です。この計画と手順(一般衛生管理プログラム)はPRP(Prerequisite Programs)と呼ばれます。

一般的な衛生管理の14の基準

 

NO.

項目

詳細

1

食品衛生責任者等の選任

食品衛生責任者の指定、食品衛生責任者の責務等に関すること

2

施設の衛生管理

施設の清掃、消毒、清潔保持等に関すること

3

設備等の衛生管理

機械器具の洗浄・消毒・整備・清潔保持等に関すること

4

使用水等の管理

水道水又は飲用に適する水の使用、飲用に適する水を使用する場合の年1回以上の水質検査、貯水槽の清掃、殺菌装置・浄水装置の整備等に関すること

5

ねずみ及び昆虫対策

年2回以上のねずみ・昆虫の駆除作業、又は、定期的な生息調査等に基づく防除措置に関すること

6

廃棄物及び排水の取扱い

廃棄物の保管・廃棄、廃棄物・排水の処理等に関すること

7

食品又は添加物を取り扱う者の衛生管理

従事者の健康状態の把握、従事者が下痢・腹痛等の症状を示した場合の判断(病院の受診、食品を取り扱う作業の中止)、従事者の服装・手洗い等に関すること

8

検食の実施

弁当、仕出し屋等の大量調理施設における検食の実施に関すること

9

情報の提供

製品に関する消費者への情報提供、健康被害又は健康被害につながるおそれが否定できない情報の保健所等への提供等に関すること

10

回収・廃棄

製品回収の必要が生じた際の責任体制、消費者への注意喚起、回収の実施方法、保健所等への報告、回収製品の取扱い等に関すること

11

運搬

車両・コンテナ等の清掃・消毒、運搬中の温度・湿度・時間の管理等に関すること

12

販売

適切な仕入れ量、販売中の製品の温度管理に関すること

13

教育訓練

従事者の教育訓練、教育訓練の効果の検証等に関すること

14

その他

仕入元・販売先等の記録の作成・保存、製品の自主検査の記録の保存に関すること

引用:厚生労働省一般的な衛生管理に関する基準

 

1番目の食品衛生責任者に立てるのは、食品衛生管理者や調理師等の資格もつ人、あるいは資格要件を満たす人、または自治体が実施する養成講習会を受講した人に限られます。その管理者の下で徹底される衛生管理・教育基準が2番目以降で定められています。

 

衛生管理においては、細菌やカビの繁殖を抑えるための清掃・消毒などの具体的な取り組みを計画・実施することが必要です。機器の部品交換を含むメンテナンスも異物混入を防ぐための計画に含まれます。

 

なお、項目の多くは衛生の保持に関わる事項ですが、9番の消費者に対する情報提供や14番の記録も重要なポイントです。万が一の際に迅速に情報を開示し、被害拡大を防いで再発を防止することが求められます。

 

 

HACCPを導入しなかった場合の罰則

 

HACCP義務化の対象となる食品関連事業者では、HACCPを導入できていないと、食品衛生法または都道府県の条例違反となり、罰則の対象となる場合があります。

 

食品衛生法違反による罰則

3年以下の懲役、300万円以下の罰金

※法人の場合は1億円以下の罰金

都道府県の条例違反による罰則

2年以下の懲役または100万円以下の罰金

 

保健所の営業許可の更新あるいは通常の定期立ち入り検査で違反が発覚すると、罰則となる可能性があるため、HACCPによる衛生管理と記録の保持を適切に実施しましょう。

HACCPを遵守して食の安全を守ろう

 

HACCPは2021年6月1日に義務化された衛生管理方法です。施行後の経過措置期間は過ぎているため、これから新に参入する事業者も、HACCPを遵守する必要があります。

 

工程ごとの管理・記録が必要であるため、導入コストはかかりますが、問題のある商品を大量製造するリスクを低減できることは大きなメリットです。また、消費者に対して安心感をもたらすブランディングの点でも、企業にとって有益な方式といえます。

 

HACCPに対応するユニフォームへの変更なども含めて、ルールを遵守した適切な衛生管理を計画・実施しましょう。

 

食品工場に適した服装とは?イラスト付きでポイントを解説


食品工場の服装ルールを帽子やジャケット、パンツなどのイラスト付きで解説します。

商品一覧
アウター
ウインドブレーカー
フォーマルジャケット
タキシード
ベスト
トップス
Tシャツ・カットソー
ポロシャツ(長袖)
ポロシャツ(半袖・七分袖)
シャツ(長袖)
シャツ(半袖・七分袖)
ブラウス(長袖)
ブラウス(半袖・七分袖)
ニット・カーディガン
スウェット・パーカー
プルオーバーパーカー
ジップアップパーカー
トレーナー
スウェットパンツ
キャップ・帽子
キャップ
春夏向け作業着
空調服®・ファン付き作業着
作業着アウター・ジャケット
春夏向け長袖作業着シャツ
半袖作業着シャツ・七分袖シャツ
作業着ポロシャツ
春夏向けコンプレッションウェア
つなぎ
スモック
春夏向けカーゴパンツ
作業着ショートパンツ・ハーフパンツ
春夏向けワークパンツ
秋冬向け・通年作業着・防寒着
防寒コート
レインウェア
秋冬向けブルゾン
秋冬向けジャンパー
作業着スウェット・パーカー
カーゴパンツ
ワークパンツ
アンダーウェア
ワークエプロン
安全靴
長靴
ヘルメット
秋冬向けアウター
秋冬向けポロシャツ
長袖作業着シャツ
インソール
作業帽
防寒ベスト
パンツ・ボトムス
スラックス
チノパン
ショート・ハーフパンツ
飲食コックコート
コックシャツ
調理用白衣
飲食店エプロン
胸当てエプロン
腰エプロン
エプロンドレス
飲食店パンツ・ズボン
コックパンツ
飲食店キャップ・帽子
ハンチング
キャスケット
ベレー帽
三角巾・バンダナ
和帽子
コック帽
食品衛生用帽子
飲食シューズ
コックシューズ
医療用スクラブ
スクラブウェア
スクラブパンツ
メディカルウェア・ナースウェア
白衣・ドクターコート
メディカルジャケット
チュニック
検診衣・患者衣(トップス)
メディカルパンツ
検診衣・患者衣(ボトムス)
患者衣(ワンピース)
医療用ガウン
患者衣(オールインワン)
検診衣(オールインワン)
介護用エプロン
歯科用エプロン
メディカルシューズ
ナースシューズ・サンダル
ナースキャップ
ナースワンピース
メディカルインナー
ジャージ
ジャージジャケット
ジャージパンツ
作務衣・甚平
作務衣・甚平(トップス)
作務衣・甚平(ボトムス)
スカート・ワンピース
スカート
ワンピース
キュロットスカート
フットウェア・シューズ
パンプス
靴下・ソックス
アクセサリー・服飾雑貨
バッグ
防寒グッズ
清涼グッズ
ネクタイ
ベルト
服飾雑貨
交換・補修部品