コンプレッションウェアはスポーツ界を中心に広まり、今では仕事やプライベートを問わず幅広く着用されているウェアです。しかし、加圧シャツやリカバリーウェアなど、似ている服があるため、違いがわからない人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、コンプレッションウェアの定義と歴史、他のウェアとの違いや種類を詳しく解説します。
コンプレッションウェアは体を適度に圧迫し、動きや疲労回復をサポートするウェアです。具体的には次のような効果を期待できます。
血液やリンパの流れを改善
筋肉の無駄な動きを軽減
消費エネルギーを減少
筋肉ダメージの軽減
怪我の予防
筋肉に適度な圧力がかかることで無駄な動きが減り、効率的に動けるようになります。結果として、全体的なパフォーマンスの向上や疲労回復効果が見込めます。
ここでは、コンプレッションウェアの歴史を紹介します。
コンプレッションウェアの先駆けとして登場したのが、1991年にワコールが立ち上げたブランド「CW-X」です。
ワコール独自のテーピング理論とガードル開発で培った技術を融合し、筋肉や関節をサポートするスポーツタイツを開発・販売しました。
その後、1996年にはオーストラリア発のコンプレッションウェアブランド「SKINS」が誕生します。ふくらはぎの着圧を強くし、足首やアキレス腱の着圧を弱めるといった段階的着圧設計を採用しました。
コンプレッションシャツの元祖は、1996年に創業したアメリカのスポーツブランド「アンダーアーマー」です。スポーツ選手がより快適にパフォーマンスを発揮できるよう、ウェアの開発に取り組みました。
1997年には吸汗速乾性に優れたアンダーウェア「ヒートギア」を、さらに同年、冬場に活躍する高い保温性と吸汗速乾性を兼ね備えた「コールドギア」をリリースしました。
これら2つのシリーズは、現在でもアンダーアーマーを代表する人気インナーとして多くのスポーツ選手に愛用されています。
ここでは、コンプレッションウェアと加圧シャツ、疲労回復ウェア(リカバリーウェア)との違いを解説します。
コンプレッションウェアと加圧シャツでは、着用目的と効果が異なります。加圧シャツは強い圧力で筋肉を刺激し、基礎代謝やトレーニング効率を高めるためのものです。猫背を矯正できるタイプのものもあります。
疲労回復ウェアは「リカバリーウェア」とも呼ばれ、一般医療機器に分類される「家庭用遠赤外線血行促進用衣」にあたります。遠赤外線の作用により血行を促進し、筋肉のコリや疲労の改善をサポートするのが特徴です。
加圧シャツやコンプレッションウェアのように着圧があるウェアではありません。締め付け感のないリラックスできる着心地が魅力で、ルームウェアやパジャマのように着用できます。
コンプレッションウェアは着圧の配置と目的によってタイプが異なります。
コンプレッションウェアには、全身着圧タイプと部分段階的タイプがあります。建設現場など常に全身を動かす仕事なら、全身着圧タイプがいいでしょう。
部分段階的コンプレッションは、部位の末端から中心に向かって圧力が弱まる設計になっています。例えばアームカバーであれば、手首が最も強く、上腕に向かって徐々に圧力が弱まる設計です。
それにより、血液やリンパ液の流れがスムーズになります。結果として、むくみや疲労の軽減に効果が期待できます。
矯正タイプのコンプレッションウェアは、腹筋や背筋に着圧をかけることによって背筋を伸ばし、姿勢を矯正する効果があります。デスクワークの方が猫背にならないように着用するのも良いでしょう。
サポートタイプは、コンプレッションウェアに備わったテーピング効果によるものです。着圧によって関節や筋肉を適度に固定し、負荷を軽減することで、ケガの予防につながります。全身を大きく動かすハードワークをされる方に適しています。
コンプレッションウェアは、大きく分類すると下記の4タイプに分けられます。
シャツ
パンツ
アームカバー
レッグカバー
それぞれ特徴やメリットについて解説します。
シャツタイプは、重い荷物の運搬や肩凝りに悩むデスクワークに適したコンプレッションウェアです。上半身の筋肉の動きをサポートし、血流を改善するため、疲労感や凝りが軽くなるでしょう。
半袖タイプは肘部分の着圧サポートがありませんが、その分、腕先の可動域が広がり動かしやすいという利点があります。製造業や工場勤務、物流業務、軽作業、デスクワークなど、幅広い業種で活躍します。
長袖のコンプレッションウェアは。夏場はUVカット機能付きのものを選ぶと、紫外線対策に有用です。秋冬は筋肉や関節の冷えを防げます。屋外や冷蔵庫内の作業に向いています。
1枚で着るならハイネックやクルーネック、重ね着するならラウンドネックやVネックが適しています。シーンに応じて選びましょう。
パンツタイプはコンプレッションタイツとも呼ばれます。ハーフパンツの作業着と合わせるのも、通気性と動きやすさの点で人気の着こなし方です。
脚のむくみや疲労感を軽減できるほか、ズボンが汗で張り付くのを防げるというメリットもあります。とくに、屈む動作が多い農作業や、長時間の立ち仕事、建設・工場・警備などのハードワークでは快適性を実感できるでしょう。
腕だけをピンポイントでサポートするのがアームカバータイプです。肩や背中のサポートが不要で、腕の疲労軽減やケガ予防を目的とする方に適しています。
UVカット機能付きの製品であれば、日焼け対策としても便利に活用できます。シャツタイプと比べて着脱が容易なため、必要なタイミングで着用・取り外しができる点もメリットです。
レッグカバータイプは、脚部の一部分を集中的にサポートするコンプレッションアイテムです。ふくらはぎの疲労軽減やむくみ対策、膝のケガ予防を目的とする方に適しています。
立ち仕事や長時間の移動が多いなど、下半身に疲労がたまりやすい業務で特に効果を発揮します。簡単に着脱できるので、ちょっと膝が気になる時など、必要なタイミングですぐに使えるのもメリットです。
コンプレッションウェアには圧迫以外の機能が備わっているものが多くあります。ここでは、代表的な機能を解説します。
ストレッチ機能は、身体の動きに合わせて生地が伸縮するため、動作の妨げにならない点が特長です。長時間の稼働でも快適に動けることから、ケガや事故の防止、疲労の軽減にもつながります。
建設現場や運送業、倉庫内作業など、身体を大きく動かす業務に適しています。
吸汗速乾機能は汗をすばやく吸収・乾燥させることで、ムレやベタつきを防ぎ、快適さと清潔感を保てるのが特長です。気化熱の作用によって涼しく感じるという魅力もあります。
夏の屋外作業や運送業、製造業、火を使う飲食業など、汗をかきやすいシーンでも快適に過ごせるでしょう。
清涼冷感機能は、熱伝導率の高い素材で素早く熱を逃がしたり、吸汗速乾によって涼感をもたらしたりする機能です。夏の屋外作業や警備、高温の機器を使用する場面など、暑さを感じやすい現場に適しています。
体温を逃がしにくくする保温機能が備わっているウェアなら、寒い環境でも筋肉や関節の冷えを防げます。冷えによる集中力の低下やケガのリスク軽減にもつながります。
冬場の屋外作業、冷凍倉庫内作業、警備業務などに適しています。
UVカット機能は有害な紫外線を遮断することで、日焼けや肌へのダメージを軽減します。肌トラブルの予防や、見た目の清潔感を保つ点でも有効です。
屋外作業、農業、配送業など、長時間日差しを浴びる職種にはぜひ取り入れたい機能です。
消臭・防臭機能は汗などによる臭いを抑え、周囲への不快感を軽減する働きがあります。特に接客時に臭いによる悪印象を与えないようにするため、身だしなみや衛生面への配慮として役に立ちます。
来客対応のある現場や人と接することが多い営業職などに適しています。
制電機能は、衣類の静電気を抑えることで、着用時の不快感を軽減します。また、ホコリや髪の毛の付着も防ぐため、衛生面を保つ意味でも効果的です。
精密機器を扱う現場、工場、医療機関、クリーンルームなどに適しています。
高耐久仕様は、摩擦や引き裂きに強い素材を使用しており、ハードな作業環境でも長く着用できるのが特長です。買い替えの頻度を抑えられるため、結果としてコストパフォーマンスの向上にもつながります。
建設・土木、製造業、物流業など、ハードユースが求められる職種の方にあると安心の仕様です。
家庭洗濯対応のコンプレッションウェアは、自宅で気軽に洗濯ができます。手洗いやクリーニングの手間がかからず、常に清潔な状態を保ちやすいのがメリットです。複数枚をローテーションで使用する際にも便利です。
現場作業、飲食・介護・医療など、毎日の着用が前提となる職種に適しています。
コンプレッションウェアは、適度な着圧により筋肉や関節をサポートし、疲労やケガのリスクを軽減する効果が期待できるウェアです。
似た製品に加圧シャツや疲労回復ウェアがあります。加圧シャツは着圧がより強く、トレーニング向けのウェアです。疲労回復ウェアは着圧がなくゆったりとした着心地で、遠赤外線の効果で疲労を軽減することを目的としています。
コンプレッションウェアには、シャツやパンツだけでなく、特定部位をサポートするアームカバーやレッグカバーもあります。日々の業務で身体の疲れを感じている方は、ぜひ用途に合ったタイプを選んで取り入れてみてください。